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サブリース契約の終了を転借人に対抗できるか?

投稿者名:宮川 敦子
投稿者資格:弁護士(東京弁護士会)

【相談】サブリース業者である賃借人からの更新拒絶により賃貸借契約が終了する場合、転借人にも出て行ってもらうことが可能でしょうか。

 

私は、商業用ビルをサブリース業者に賃貸していたところ、先日、サブリース業者から、賃貸借契約を更新しないとの通知が来ました。

 

そのサブリース業者が転貸していたテナントは、以前から、ゴミの放置や騒音等で、近隣からクレームを受けていたことから、これを機に、そのテナントにも出て行ってもらいたいと考えています。

 

サブリース業者との賃貸借契約が終了するタイミングで、転借人のテナントにも出て行ってもらうことが可能なのでしょうか。 

 

【回答】サブリース業者である賃借人からの更新拒絶により賃貸借契約の終了を、転借人に対抗できないと判断した判例があり、転借人に出て行ってもらうことが難しい可能性が相当程度あります。

 

①賃貸人が、賃借人にその知識、経験等を活用してビルを第三者に転貸し収益を上げさせることによって、賃借人から安定的に賃料収入を得ること等を目的として賃貸借契約を締結し、賃借人が第三者に転貸することを賃貸借契約締結の当初から承諾していたこと、②①の目的の下に賃貸借契約や転貸借契約が締結され、現に、転借人がその貸室を占有していること等の事実関係がある場合には、賃借人の更新拒絶による賃貸借契約終了をもって建物の転借人に対抗できないと判断した判例があります。

 

個別の事情(賃貸借・転貸借契約の締結の経緯、転借人の占有の有無等)により、異なる判断がなされる可能性はありますが、本件でも、転借人のテナントに出て行ってもらうことができないと判断される可能性が相当程度あるといえます。 

 

【解説】

 

サブリース事業とは

 

サブリース事業においては、アパートやビルなどの建物の所有者が、サブリース業者に一括して建物を賃貸し、サブリース業者から入居者である転借人に転貸するという契約関係になります。

 

サブリース業者が、建物所有者に賃料収入を約束した上で一括して建物を借り上げ、これをエンドテナントに借上げ賃料よりも高額の転貸料をもって転貸し、収益を得ることになります。

 

建物所有者からすると、空室等のリスクを、サブリース業者の賃料保証などによって、軽減しながら、賃料収入を得るという利点があります。

 

 

賃貸借契約終了の際の転借人の保護

 

(サブリース事業も含めて)転貸借は、原賃貸借における賃借人の権利の範囲で成立します。

 

そのため、原賃貸借における賃借人の賃借権が消滅すれば、転借権はその存在の基礎を失うことになります。「親亀こけたら子亀もこける」とも表現されます。

 

ただし、賃貸借と転貸借は別の契約であり、常に、賃貸借が消滅すれば、転貸借も当然に消滅するというわけではありません。

 

判例(サブリース事業に限る判例ではありません。)は、賃貸借が終了した場合に転貸借も終了するかについて、賃貸借の終了事由に応じて、次のように判断しています。

 

(1)賃貸借の合意解除の場合

原則として、賃貸人は賃貸借の合意解除を、転借人に対抗できません。

 

(2)賃借人の債務不履行による解除の場合

原則として、賃貸人は賃貸借の解除を、転借人に対抗できます。

 

(3)賃貸人からの更新拒絶又は解約申入れによる終了の場合

原則として、賃貸人は更新拒絶又は解約申入れによる終了を、転借人に対抗できるとしています。

ただし、正当事由の有無の判断において、転借人の事情も考慮すべきとして、転借人の保護を図っています。

 

本件のように、賃借人からの更新拒絶又は解約申入れによる終了の場合について、かつて、あまり裁判例はありませんでした。

  

しかし、最高裁平成14年3月28日がその点について判断しましたので、ご紹介します。

 

ただし、本判例は、賃貸借がサブリースである場合の事例判断であり、いわゆるサブリース契約であることに着目して判断したものであると、評価されています。

 

そのため、サブリース契約ではない賃貸借においては、異なる判断がなされる可能性があります。

 

また、サブリース契約であっても、個別の事情(賃貸借・転貸借契約の締結の経緯、転借人の占有の有無等)が加わった場合、上記判例とは異なる判断がなされる可能性も残っているものと考えられます。

 

 

最高裁平成14年3月28日

 

本判例では、㋐賃貸借が賃借人からの更新拒絶に基づき終了した場合、賃貸人は転借人に対して賃貸借の終了を対抗することができるのか、㋑賃貸借がサブリースであることが対抗の可否に影響するのか、が問題になりました。

 

そして、次のように判断されました。

 

サブリース業者を賃借人とする事業用ビル1棟の賃貸借契約が賃借人の更新拒絶により終了した場合において、①賃貸人が、賃借人にその知識、経験等を活用してビルを第三者に転貸し収益を上げさせることによって、自ら客室を個別に賃貸することに伴う煩わしさを免れるとともに、賃借人から安定的に賃料収入を得ることを目的として賃貸借契約を締結し、賃借人が第三者に転貸することを賃貸借契約締結の当初から承諾していたものであること、②①の目的の下に賃貸借契約や転貸借契約が締結され、現に、再転借人がその貸室を占有していること等の事実関係がある場合には、賃貸人は、信義則上、賃貸借契約の終了をもって再転借人に対抗することができないと判断しました。

 

本事案においては、まず、原告(賃貸人)が訴外サブリース業者(賃借人)に対し、第三者への転貸目的で対象物件を賃貸し、サブリース業者がA社(転借人)に転貸しました。その後、A社が原告の承諾を得た上で、被告(再転貸人)に対し、再転貸を行いました。

 

裁判所の判断の過程においては、A社(転借人)は原告(賃貸人)から、被告(再転貸人)への再転貸の承諾を得たこと、その被告が現に貸室を占有していることが、重視されています。

 

このことから、同じくサブリース事業の事案であっても、個別の事情(賃貸借・転貸借契約の締結の経緯、転借人の占有の有無等)によっては、上記判例とは異なる判断がなされる可能性もあるものと考えられます。

 

 

本件について

  

賃借人がサブリース業者である本件でも、上記判例のように、賃借人の更新拒絶による賃貸借契約終了をもって建物の転借人に対抗できないと判断される可能性があります。

 

ただし、裁判例等の積み重ねがなく、不明確な要素が強いですが、個別の事情(賃貸借・転貸借契約の締結の経緯、転借人の占有の有無等)によっては、上記判例と異なる判断がなされる可能性もあるものと考えられます。