コラムColumn

現状による引渡し特約で大丈夫!?

作成日: 2021/05/20
更新日:
投稿者名:宮川 敦子
投稿者資格:弁護士(東京弁護士会)
記事が役に立ったらシェア!



【執筆者:宮川敦子】

弁護士(東京弁護士会)。慶應義塾大学法科大学院修了。

不動産トラブルに関する業務、家族信託・遺言作成業務などをはじめとする多岐の分野に携わる。





【相談】不動産を「現状有姿で引き渡す」旨の特約を規定しておけば、売却後に契約不適合責任を追及されることはないでしょうか。

 

私は、所有する建物を売却することになりました。

 

老朽化が進んだ建物であったため、最初に買主に提示した売買価格より、大幅に減額せざるを得ませんでした。そのため、売却後に契約不適合責任を追及されることは避けたいと考えています。

 

不動産を「現状有姿で引き渡す」旨の特約を規定しておけば、売却後に契約不適合責任を追及されることはないでしょうか。

 

【回答】不動産を「現状有姿で引き渡す」旨の特約を規定していただけでは、契約不適合責任を免除されることにはなりません。

  

不動産を「現状有姿で引き渡す」旨の特約を規定していただけでは、契約不適合責任を免除されることにはなりません。

 

契約不適合責任を免除する旨を明確に規定しておくことが必要です。

 

また、規定するだけではなく、その特約の内容をきちんと買主にも説明し、後日、特約の効力を争われないようにしておくことも必要です。

 

 

現状で引き渡す旨の特約があれば安心?

 


不動産の売買契約書において「現状有姿で引き渡す」旨の特約が設けられる場合があります

 

このような売買契約を現状有姿売買といいます。

 

現状有姿売買の特約がある場合、売主は目的物に契約不適合があっても、契約不適合責任を負うことはないのでしょうか。

 

この点に関して、不動産売買は特定物(※)の引渡しであるところ、民法483条において、特定物の引渡しについて、次のように定められています。

 

※特定物とは、(たとえば大量生産される物などと対比して、)取引の目的物として当事者がその目的物の個性に着目した物をいいます。



(特定物の現状による引渡し)

第483条 債権の目的が特定物の引渡しである場合において、契約その他の債権の発生原因及び取引上の社会通念に照らしてその引渡しをすべき時に品質を定めることができないときは、弁済する者は、その引渡しをすべき時の現状でその物を引き渡さなければならない。

民法483条によると、不動産のような特定物の売買においてその特定物を引き渡すときには、その現状のまま引き渡せばよいということになります。

 

ですから、不動産の売買契約書において「現状有姿で引き渡す」旨の特約があっても、それは、民法483条を売買契約書の中で再確認したものにすぎないとも言われます。

 

つまり、引渡し時において、対象物件に修繕箇所や経年劣化などがあっても、売主が買主に対し、修繕することなくあるがままの状態で引き渡しますという合意に過ぎません。

 

単に「現状有姿で引き渡す」旨を規定していても、その文言から、対象となる不動産に契約不適合が存在した場合に、契約不適合責任を免れさせることまでを読み取ることはできません。

 

 

明確な契約不適合責任の免除特約を置きましょう

 


売主が契約不適合責任を免除されるためには、売買契約書において、「契約不適合に関して売主の責任を免除すること」を明確に規定しておくことが必要です。

 

ただし、特約の存在や内容について、説明を行っていない等の事情がある場合には、免責特約の成否やその範囲を争われることもありますので、注意が必要です。

 

実際に、免責特約の成否が争われた東京地判平成7年12月8日の事案をご紹介します。


東京地判平成7年12月8日

【事案の概要】

対象土地にコンクリート等の埋設物があったことから、買主である原告が売主である被告に対し、契約不適合責任を追及しました。

被告は、契約不適合責任について免除される旨の特約があるため、被告に責任がないことを主張しました。それに対して、原告は特約がある旨の説明を受けておらず、特約の存在を知らなかったとして特約の無効を主張しました。


【結論】

裁判所は、売主が買主に対し、対象土地の売買契約を締結するに際して、売買契約書の各条項を一条項ずつ説明し、特に契約不適合責任の免除条項について、売主に分かる範囲の埋設物はすべて除去しているが、分からないものについては、責任を取れず買主の負担になる旨を説明したこと、買主はその説明を受けた上で契約を締結したことが認められると判断しました。

原告と被告との間で、契約不適合責任を免除する合意をしたことが認められるとし、免責特約を無効とする原告の主張を排斥し、被告の契約不適合責任は免除されると判断しました。


特約の存在や内容について、説明を行っていない等の事情がある場合には、免責特約の成否やその範囲を争われることもあります。

 

上記の裁判例を始めとするいくつかの裁判例を参考にすると、次のような事情を考慮して、免責特約の成否やその範囲が判断されています。

 

・当時者の属性

・売買契約締結に至る経緯

・特約条項の文言

・特約条項の説明

・売買代金の額の変遷や最終的な売買代金の額

 

まずは、契約不適合責任を免除される旨を明確に規定しておくことが必要ですが、売主の理解力などに応じて特約の存在や内容をきちんと説明し、また、説明したことが後日証明できるように確認書などの書面を作成しておくと安心でしょう。



不動産投資DOJOでは、弁護士や税理士などの専門家に無料相談可能です。

まずは会員登録をお願いいたします。

また、回答してくださる専門家の方も募集中です。(専門家登録はこちら)



記事が役に立ったらシェア!