コラム Column
弁護士(第二東京弁護士会)。
2017年に弁護士法人Martial Artsに入所し、不動産トラブルや賃貸借契約書に関する業務をはじめ、多分野にわたる法律業務に従事している。
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【相談】不動産の売買でもクーリング・オフをすることができますか。
先日、学生時代の友人から久しぶりに話したいと誘われ、喫茶店で会いました。昔話で盛り上がった後、実はいい物件があるから購入しないかと話を切り出されました。
その友人は不動産会社に勤めているようで、会社が持っているマンションの営業をしているとのことでした。「なんだ営業か」と思ったのですが、以前から不動産投資に少し興味があったことと、その物件の良さを力説されたこと、また、友人のよしみもあることから、その場でマンション購入の申込みをしてしまいました。
後日友人の会社の事務所で契約をすることになり、その際に様々な書類を渡すということで、この日は物件のパンフレット以外の書面は見せてもらっていません。
しかし、その後冷静になって改めて考えたところ、やはり申込みを撤回したいと思うに至りましたが、申込みから10日も経ってしまいました。
この場合、クーリング・オフ制度で申込みの撤回をすることはできるのでしょうか。
【回答】宅建業法上もクーリング・オフの制度があり、所定の要件を満たせばクーリング・オフをすることができます。
宅地建物取引業法(以下「宅建業法」といいます。)上もクーリング・オフ制度があり、以下の要件を満たすことによって申込みの撤回や契約の解除をすることができます。
①売主が宅建業者であり、かつ、買主が宅建業者ではないこと
②宅建法上の「事務所等」以外で申込み又は契約をした場合であること
③クーリング・オフができる旨及びその方法を書面で告げられてから8日が経過していないこと
④物件の引渡し及び代金全額の支払いがなされていないこと
次項から詳説しますが、本件では上記要件を満たすと考えられ、書面により申込みの撤回の通知を行うことでクーリング・オフが可能です。
宅建業法は、宅建業者が自ら売主となる宅地建物取引契約について、宅建業者の「事務所等」以外の場所でなされた宅地建物売買の申込み又は売買契約について、8日間は申込みの撤回や契約の解除を認めています(宅建業法37条の2)。
なお、クーリング・オフについて宅建業法の規定に反し買主に不利となる特約は無効となります(宅建業法37条の2第4項)。
宅建業法上のクーリング・オフ制度は、宅建業者と取引をする消費者を守るための制度ですので、売主が宅建業者であり、かつ、買主が宅建業者でないことが必要となります(宅建業法37条の2第1項)。
宅建業法上のクーリング・オフ制度は、業者より知識も経験も少ない買主が、正しい判断をしづらい場所で物件購入の申込みや契約を行った場合に、その申込みの撤回や契約の解除ができるという制度です。宅建業法は、買主が正しい判断ができる場所を「事務所等」として定めており、この「事務所等」以外の場所でなされた申込み又は契約がクーリング・オフの対象となります(宅建業法37条の2第1項)。
クーリング・オフの対象とならない「事務所等」は、宅建業者の事務所や案内所、モデルルームやモデルハウス等です。買主から自宅や勤務先で契約に関する説明を受ける旨の申出による場合の自宅や勤務先も「事務所等」にあたります。買主自らが、自宅や勤務先を指定した場合には、買主の方で投資の正しい判断ができるであろうという理由です。
逆に、喫茶店やファミリーレストランなどで申込み又は契約をした場合や、売主からの申出によって買主の自宅又は勤務先に来てもらい、そこで申込み又は契約をした場合はクーリング・オフの対象となります。
売主である宅建業者からクーリング・オフができる旨及びその方法を書面で告げられてから8日が経過してしまうと、クーリング・オフができなくなります(宅建業法37条の2第1項1号)。消費者の保護と取引の安定とのバランスの観点から、8日という期間制限が設けられており、この期間内にクーリング・オフをしなければならないのです。
もっとも、この期間は申込みや契約をしたときではなく、クーリング・オフができる旨及びその方法を書面で告げられた日から起算します。つまり、クーリング・オフについて説明を受けていない場合や、口頭では説明を受けたけれど書面では告げられていない場合は期間制限にかかることはありません。
物件の引渡しを受け、かつ、代金全額を支払ってしまうと、クーリング・オフをすることはできなくなります(宅建業法37条の2第1項2号)。 引渡しと代金支払いが完了した後にまでクーリング・オフを認めると、法的安定性を害することになるからです。
物件の引渡しを受け、代金の一部を支払ったのみである場合は、まだクーリング・オフが可能です。
本件では、友人の不動産会社は宅建業者であり、買主は宅建業者ではないと思われますので、要件①は問題ありません。
続いて、喫茶店という「事務所等」以外の場所でマンション購入の申込みをしているため要件②も満たします。
また、本件では申込みから10日が経っていますが、買主の方は物件のパンフレット以外の書面を見せてもらっていませんので、少なくとも書面ではクーリング・オフができる旨及びその方法を告げられていません。したがって、8日の期間制限は起算されませんので、申込みから10日経ったとしても期間制限にはかからず、要件③も満たします。
そして、契約締結にも至っていないことから、当然物件の引渡しや代金支払いもありませんので要件④も問題ありません。
よって、本件では宅建法上のクーリング・オフの適用要件を満たすため、買主の方はクーリング・オフにより申込みを撤回することができます。
クーリング・オフをする場合、書面により申込みの撤回や契約解除を通知する必要があります。書式は決まってはいませんが、後に争われないよう内容証明郵便により通知を発送するのが望ましいでしょう。
上記書面を発送すると、その通知を発送した時点で申込みの撤回又は契約の解除の効果が生じます(宅建業法37条の2第2項)。
買主がクーリング・オフをした場合、売主はクーリング・オフに伴う損害賠償や違約金の支払いを買主に請求することはできません。また、宅建業者は、申込みや契約に際し買主から受領していた手付金等の金銭がある場合はそれらを返還する必要があります。
以上より、本件でも、買主の方は友人の会社に書面で申込み撤回の通知を送付することにより、申込を撤回することができます。
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