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窓への目隠し

投稿者名:宮川 敦子
投稿者資格:弁護士(東京弁護士会)

【相談】自宅のリビングが隣地建物の窓から丸見えとなる場合、隣地所有者に対し、目隠しの設置を請求することができますか。

 

私が所有する自宅の隣の土地で、新しい家の建築工事が始まりました。

 

その家の2階に窓が設置されるようですが、その窓からは私の自宅の1階のリビングが丸見えになってしまう位置関係になっています。

 

私から、建築中の家の所有者に対して、窓に目隠しを設置するよう請求できるのでしょうか。

 

【回答】①隣地との境界線から、隣地建物の窓までの距離が1メートル未満であり、②ご相談者の自宅を観望しようと思えば物理的にいつでも観望できる位置、構造の窓である場合には、窓に目隠しを設置するよう請求し得ます。

 

①隣地との境界線から、隣地建物の窓までの距離が1メートル未満であり、②ご相談者の自宅を観望しようと思えば物理的にいつでも観望できる位置、構造の窓である場合には、隣地建物の所有者に対して、窓に目隠しを設置するよう請求することが可能です。

 

【解説】

 

目隠しについての法律の規定

 

建物の構造や設備について規定している法律といえば、まず、建築基準法が思い浮かぶかと思いますが、建築基準法には目隠しについて定める規定がありません。

 

この点については、民法で次のように規定されています。


民法235条

第1項 境界線から1メートル未満の距離において他人の宅地を見通すことのできる窓又は縁側(ベランダを含む。次項において同じ。)を設けるものは、目隠しを付けなければならない。

第2項 前項の距離は、窓又は縁側の最も隣地に近い点から垂直線によって境界線に至るまでを測定して算出する。

境界線から1メートル未満の距離において窓等が設置されていれば、常に目隠しを付けなければならないわけではありません。

 

隣地建物の所有者に対し、目隠しの設置を求めるためには、「他人の宅地を見通すことのできる」窓等である必要があります。

 

 

目隠しの設置が認められる要件

 

(1)「他人の宅地を観望しようと思えば物理的にいつでも観望できる位置、構造の窓」であること 

 

裁判例(さいたま地判平成20年1月30日)において、目隠しの設置が認められる要件として、「他人の宅地を観望しようと思えば物理的にいつでも観望できる位置、構造の窓」である必要があるとしています。

 

そして、具体例として、次のような窓は、「他人の宅地を観望しようと思えば物理的にいつでも観望できる位置、構造の窓」に当たるとしています。

 

・引き違い窓であり、開ければ容易に原告の宅地を観望しうる窓。

 

引き違い窓とは、2枚以上のガラス戸を左右にスライドさせて開閉するタイプの窓を指します。

 

また、同裁判例において、次のような窓は、「他人の宅地を観望しようと思えば物理的にいつでも観望できる位置、構造の窓」に当たらないと判断しました。

 

・窓の下部のみが押し出され、全開することができない構造の滑り出し窓。換気の目的のために窓を開けることは考えられるものの、その構造からすると、窓を開けたとしても意識的に窓からのぞきこむ等の行為をしない限り、通常の状態では原告の宅地を観望することができない。

 

滑り出し窓とは、縦方向を回転軸として、窓枠の上下に設けられた溝に沿って、室外側へ滑り出しながら開く窓を指します。

 

 

(2)「宅地」であること

窓から見える対象が、他人の「宅地」である必要があります。

 

本条は、プライバシー権保護に値する生活が営まれていない場合にまで適用されません。

 

この点について、「事務所」が覗かれるという理由で目隠しの設置を請求した事案で、「宅地」の解釈として、次のように判断されました(東京高判平成5年5月31日)。

 

「民法235条により目隠し設置義務を負う者とは、境界線より1メートル未満の距離において他人の宅地を観望すべき窓または縁側を設けるものであるところ、相隣関係を規定する本条の趣旨とするところは、所定の至近距離に設置される窓または縁側から隣地を除かれることにより害されるおそれのある隣地居住者の私生活上の平穏(プライバシー)を、その設置者に目隠し設置の義務を負わせることにより保護しようとするところにあると解せられるから、同条にいう宅地とは人が居住として使用する建物の敷地をいい、工場、倉庫、事務所に使用されている建物の敷地等は右宅地に含まれないものと解するのが相当である。」

 

上記裁判例では、専ら「事務所」等の用途で使用されている建物について問題となりましたが、民法235条の適用を問題とする余地はないと判断しました。

 

 

本件について

 

本件でも、①隣地との境界線から、隣地建物の窓までの距離が1メートル未満であり、②ご相談者の自宅を観望しようと思えば物理的にいつでも観望できる位置、構造の窓である場合には、ご相談者は新しい自宅の所有者に対して、窓に目隠しを設置するよう請求し得ます。

 

②に当たるかどうかの判断については、窓の大きさや構造等が関係してきます。

 

仮に、窓ガラスの素材が曇りガラス等であったとしても、その窓が開閉できないいわゆる「はめ殺し」窓や滑り出し窓ではなく、全開できるタイプの構造であれば意味がありません。窓を全開すると、結局、隣を見渡し得ることになります。

 

隣地建物が完成した後に、窓の大きさ、構造等を変更したり、後付けで目隠しを設置するのは費用や手間がかかるため、早期に隣地建物の所有者と協議していただくのがよいと考えます。