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パンフに記載されていた内容や説明と違う場合の対応について

相談者No.1
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タワーマンションを投資目的も兼ねて購入したところ、仲介業者Tが作成したパンフレットに「スケルトンから内装リノベーション予定《デザイナー監修》」と広告されていたにもかかわらず、実際は、売主によって、既存の壁や天井を利用する内装工事が行われました。
 スケルトン状態からの内装工事(専有部分についてコンクリートを剥き出しの状態にしたうえで、給排水管を新設し、床を立ち上げ、新しい躯体以外の壁を新設して天井を張り直す工事)であることにも魅力を感じて購入したので、Tの説明には納得いきません。Tに責任を取ってもらえないのでしょうか。

齋藤 拓

齋藤 拓 弁護士(福岡県弁護士会)

不動産取引の仲介は、民法に定められている(準)委任契約に当たるため、仲介業者は、依頼者に対し、善良なる管理者の注意をもって、仲介業務を処理しなければなりません。そして、依頼者が物件を購入したり、借りたりすることを検討している状況では、その判断に重要な影響を及ぼす事柄を、依頼者に説明する義務があります。
 
ところで、仲介業者が、依頼者に説明するための前提として、調査を行うことが義務づけられているのかが問題となることがあります。
 仲介業者が説明事項について既に知っているのであれば、調査したことを前提とした説明義務を負っていることになります。
これに対し、説明事項を知っているわけではないものの、知ることができるといえる場合にも、調査義務が認められる場合があります。
ただし、調査すれば判明する事柄のすべてについて、仲介業者に調査義務を負わせることは、際限のない義務を負わせることになりかねません。そこで、①容易に知ることができる事柄や、②調査の依頼を受けてこれを引き受けた事柄、③取引の具体的な状況からすれば、仲介業者として当然に調査するべきであると考えられる事柄などについては、調査義務があると考えられています。
 たとえば、裁判所では、土地の売買での境界や、賃貸中の物件の売買における賃借人の属性などについて、仲介業者の調査義務が認められることがあります。
 本件では、Tは自らパンフレットに内装工事がスケルトン状態で行われると広告していたのですから、この説明内容と異なるところがないか調査する義務を負っていたということができます。したがって、Tは、調査説明義務を怠ったことを理由に損害賠償責任を負います。似た状況で争われた裁判では、仲介業者の調査説明義務違反がなければ、買主は、スケルトン状態からの内装工事ではないことを前提とした販売価格の交渉ができたことを理由に、仲介業者に対し、慰謝料として100万円の支払いが認められています(東京地裁平成25年3月18日判決)。
※この投稿は、2019年12月08日時点の回答になります。ご自身の責任で情報をご利用いただきますようお願い致します。
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