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賃貸物修繕時、入居者都合による繰り返し不在の対応について

相談者No.4
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入居者より”台風後に雨漏りや壁紙などの剥がれが発生しているので修繕してほしい”との連絡があり、管理会社に業者手配を依頼していました。

しかし、管理会社、入居者間で日程調整されているにもかかわらず、入居者は当日不在であることが繰り返され5か月間経過しております。そこで質問ですが

1.入居者不在時に管理会社または所有者立ち合いで内装工事実施可能でしょうか。
2.工事業者に代わり訪問回数に応じた費用を入居者に請求可能でしょうか。
3.入居者より賃料は支払われていますが、修繕に応じないことで善良な管理者の注意義務違反として契約解除することは可能でしょうか。

ご回答のほどどうぞよろしくお願いいたします。

溝口 矢

溝口 矢 弁護士(東京弁護士会)

<質問1について>

区分所有法6条2項で、区分所有者は、その専有部分又は共用部分を保存し、または改良するため必要な範囲内において、他の区分所有者の専有部分等の使用を請求できるとされています。
また、マンション標準管理規約23条では、区分所有法6条2項を具体化し、管理組合の必要箇所への立入請求権も認めています。
そのため、漏水原因の調査や内装工事の実施等のために、当該住居への立入・使用を請求することができます。
ただし、あくまで請求権であるということには注意が必要です。入居者が立入等を拒んだ場合には、判決を得てからでなければ立入等はできません(判決を得ずに立入等をした場合、民事・刑事いずれの責任にも問われる可能性がございます)。

<質問2について>

工事業者が訪問した回数分だけの費用をご質問者様が負担されたのであれば、請求できる余地はあると思われます。この点については、個別具体的な事情によりますので「請求が認められる可能性がある」という程度のものと考えて頂ければと思います。

<質問3について>

ご質問者様の「契約解除」が指す契約が、入居者と区分所有者の賃貸借契約のことをいう前提でお答えします。
この点については、東京地裁平成26年10月20日判決(平成25年(ワ)第34512号)が参考になります。賃借人が漏水調査・修繕に協力しない場合に、賃貸人による賃貸借契約の解除を認めた裁判例です。
しかし、同判決は、賃借人が不合理な行動をとっていたことや賃貸人が誠意ある対応を尽くしていたことが明白な事案でした。本件のように、賃借人が漏水調査等に一応の協力意思は示しており賃料も滞りなく支払っている場合にまで、同様の判断がなされるかは、専門家によっても判断が分かれ得るところでしょう。
加えて、一般論として、借主に債務不履行があっても、信頼関係を破壊するに至らない場合には、契約の解除は認められないとする判例法理が確立しており、実際に信頼関係が破壊されたと認められるハードルは低くないという点も踏まえる必要があります。
そのため、賃貸借契約の解除が認められる可能性があるとの回答にとどまることになります。

以上のように、いずれのご質問についても、具体的な事情を踏まえた、慎重な法的考察が必要となります。専門家へのご相談も視野に入れて対応を検討されることをおすすめいたします。
※この投稿は、2020年03月08日時点の回答になります。ご自身の責任で情報をご利用いただきますようお願い致します。
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