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テナントの立ち退き請求について

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私は商業用ビルを所有しており、A社がビルの一フロアにテナントとして入っていたのですが、賃料の滞納が続いた末にフロアに誰もいなくなったので、裁判で立退きの請求を認める判決を出してもらいました。しかし、フロアには依然としてパソコンやデスク等のA社の備品がそのままとなっています。判決に基づいて撤去してもよいのでしょうか。

齋藤 拓

齋藤 拓 弁護士(福岡県弁護士会)

ビルからの立退きを命じる判決が出ても、A社が備品をフロアから運び出さなければ、強制執行という手続きが必要となります。
 テナントの同意を得ずに備品を撤去することは禁じられます。A社は、備品をそのままにして営業を停止していますが、これらの動産は経済的価値が認められますから、勝手に処分すればA社から損害賠償請求を受けかねません。
 そこで、建物の明渡しの強制執行という手続きを、判決書を必要書類の一つとして、ビルの所在地を管轄する裁判所の執行官という職員に対して申し立てます。東京地方裁判所本庁では、執行官と、①強制執行を行う日を公示する明渡し催告の日程調整や、②物件等の状況確認、③執行補助者(備品等を搬出・保管等する業者)の選定などの打合せが行われます(執行官面接)。本件では、A社の備品の搬出が必要となるため、③執行補助者の選定が必要です。裁判所の執行官室には、執行補助者に指定された登録業者の名簿が備え付けてあります。
 強制執行の費用(弁護士報酬以外)の中で最も大きいのが、執行補助者に支払う料金です。たとえば、ファミリー型のマンションでも(家具等が多い場合)、50万円以上になることがあります。見積りは、運搬車両の台数や作業員の人数、所要時間等により算定されます。
 明渡しの催告では、明渡しの期限と実際に強制執行を行う日(断行日といいます。)が記載された書面(公示書)が建物内に貼り付けられます。また、断行日には物品が搬出のうえ保管され、その後保管期間を経て、廃棄処分又は売却処分されます。ただし、保管期間の経過前に処分することはできず、保管期間中に賃借人が受け取りに来た場合には、引渡しが必要です。
 本件では、A社にとって重要なパソコン等の備品がありますから、A社のスタッフが断行日の前日までに備品をすべて搬出する可能性もあります。この場合には、強制執行の申立てを取り下げて、執行補助者との契約をキャンセルできます。
 なお、物品の保管場所は、強制執行の申立人の費用において準備する必要があり、また、保管期間経過後の処分費用についても,申立人の負担となる点にも注意が必要です。
※この投稿は、2019年12月12日時点の回答になります。ご自身の責任で情報をご利用いただきますようお願い致します。
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