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告知事項通知期間

相談者No.4
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いつも拝見させていただいております。

さて、早速質問ですが、心理的瑕疵(自然死、自殺、他殺による死亡)に関する告知事項の義務があるのは理解しておりますが、いつまで告知する義務があるのでしょうか。

年数などの期間で定まっているのでしょうか、一度、誰かが居住した場合にはその後の告知は不要というのは法的には正しいのでしょうか。

また、同居人(例えば夫婦で同居)が亡くなった後に継続して居住していた場合は心理的瑕疵は告知する義務はあるのでしょうか。

森 春輝

森 春輝 弁護士(第二東京弁護士会)

入居者の死亡等で心理的瑕疵のある物件について,いつまで告知義務があるかという点に関して法的に明確な基準はありません。
告知義務があるかどうかは,死亡原因が自然死・病死,自殺,他殺のいずれであるか,死亡からどの程度期間が経過しているか,契約形態が賃貸か売買か,事業用物件か居住用物件か等の具体的事情により,個々に判断されます。
ご質問の,一度誰かが居住した場合には告知義務がないのかという点については,実務上賃貸の場合は入居者がいればその後の賃借人には告知しないという取り扱いが一般的だと思います。
実際に賃借人がごく短期間で退去したといった特段の事情の無い限り,一度入居者が一定期間生活をすること自体によって,その前の賃借人が自殺したという心理的な嫌悪感の影響もかなりの程度薄れるとして,告知義務を否定した裁判例もございます(東京地裁平成19年8月10日)。
もっとも,それのみで告知義務がなくなるとは限りません。
例えば,死亡原因が他殺で大きく報道されている場合などは,一度賃借人が入居した場合でも,その後の賃借人にも告知義務があると判断される可能性は十分考えられます。
つまり,事案によって判断は異なりますので,法的に告知が不要とはまでは言い切れません。

続いて,「同居人が亡くなった後に継続して居住していた場合」についても事案によって判断は異なりますが,相談者の方は例えば夫婦の一方が病気で亡くなった後,すぐに発見され,配偶者が物件に住み続けた場合などを想定しているのでないかと思われます。
このような場合は,心理的な嫌悪感が大きくないと考えられますので,心理的瑕疵に当たらず,次の入居者に対する告知義務がないと判断される可能性が高いと考えられます。

なお,今年に入ってから国土交通省が事故物件についてのガイドラインの作成を検討しています。
これまでの事故物件に関する裁判例の判断を踏まえて作成され,「死後○か月以上たって住人が発見された場合は事故物件」など,できるだけ具体的な基準を示す方針であるようです。
これが公表された場合は,ガイドラインに従って判断していくことになると思われます。
※この投稿は、2020年07月22日時点の回答になります。ご自身の責任で情報をご利用いただきますようお願い致します。
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