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宅建士の表示の必要性について

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当社はマンションの販売業者ですが、販売業務を代理業者に委託しています。買主に重要事項説明を行う際、重要事項説明書には、その宅建業者と宅建士に加えて、当社の名称と宅建士も表示する必要があるのでしょうか。

齋藤 拓

齋藤 拓 弁護士(福岡県弁護士会)

土地又は建物の販売等に当たり、宅建業者は、売買契約が成立するまでの間に、買主に対して、重要事項説明書を交付して説明しなければなりません(宅地建物取引業法(以下「法」といいます。)35条1項)。また、重要事項説明書には、宅建士の記名・押印が必要となりますし(同条5項)、この説明義務の責任の主体である宅建業者の記名・押印もなされるのが一般的です。
 不動産取引の実務においては、物件の所有者である宅建業者が、自ら直接販売業務を行う取引形態だけではなく、複数の宅建業者が取引に関与する場合が少なくありません。たとえば、分譲マンションの販売では、売主である数社の宅建業者があり、その数社がそれぞれ販売代理業者との間で業務委託契約を締結して、販売に係る営業活動を委託するというケースが見受けられます。
 では、このように複数の宅建業者が取引に関与する場合には、どの業者が重要事項説明義務を負い、その名称と宅建士を表示する必要があるのでしょうか。
 法35条1項は、宅建業者が、宅建士をして重要事項説明書を交付し、説明させなければならないと定めているのみですから、複数の宅建業者が取引に関与する場合に、その一部の宅建業者が義務を免れることは規定していません。また、取引に関与している以上、そのように解釈することも困難であると思われます。
 この点に関して、取引に関与する宅建業者のうち、いずれか1社の宅建士が重要事項説明書の交付・説明を行えばよいと考えられてはいますが、これは、あくまでも重要事項説明の目的が取引に関する重要事項を事前に理解させることにあるので、何度も説明を行ったり、複数の宅建士が立ち合う必要はないとの考慮によるものです。
 ですから、取引に関与するすべての宅建業者が、宅建士をして重要事項説明義務を負い、その内容に責任を負っていると解釈すべき以上、すべての宅建業者が重要事項説明書にその名称及び宅建士を表示する必要があると解釈されます。
 したがって、ご相談のケースにおいても、代理業者の名称及び宅建士の表示のみならず、売主の販売業者の名称及び宅建士の表示も必要になると考えられます。
※この投稿は、2019年12月15日時点の回答になります。ご自身の責任で情報をご利用いただきますようお願い致します。
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