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別荘の共同相続についての質問です

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親の急逝に伴い、国内リゾート地にある別荘を、弟と妹の3人で共同相続しました。3人で話し合って、賃貸しようと考えています。どのような点に気を付ければよいでしょうか。

齋藤 拓

齋藤 拓 弁護士(福岡県弁護士会)

共同相続した不動産は、相続人との間で法定相続分に応じた「共有」となります。不動産等、物を「共有」という状態で所有することになった場合には、その処分・変更には共有者全員の同意が必要になります。また、共有物の管理に関する事項は、各共有者の持分の価格に従って、その過半数で決める必要があります。ただし、管理には至らない保存行為に止まる場合には、各共有者が単独で行うことができます。
 本件では、共有不動産である別荘の賃貸借契約について、①賃貸借契約の締結、②賃料の変更、③賃貸借契約の解除が、それぞれ共有物の処分に当たるのか、それとも管理又は保存行為に当たるのかという問題を取り上げて説明します。
 第一に、①賃貸借契約の締結については、別荘の賃貸借契約の内容に左右されるものの、建物所有目的の一般的な普通建物賃貸借契約であれば、借地借家法により借主の賃借権が厚く保護されることになることから、処分に当たると考えられます。
 これに対して、普通建物賃貸借契約の更新については、一般的な自動更新条項に基づいて当事者により特に通知がなければ自動更新されるのであれば、建物の現状に変更が加えられるわけではないことから、管理又は保存行為に当たると考えられます。一方、自動更新条項によらず、新たな合意により更新されるのであれば、その合意の内容次第で、処分であるのか、管理又は保存行為であるのかが判断されると考えられます。
 第二に、②賃料の変更については、一般的に管理であると考えられますが、大型の建物のサブリースにおける賃料の変更は、管理ではなく変更とされる場合があることには注意が必要です(東京地裁平成14年7月16日判決)。
 第三に、③賃借人の賃料滞納等、債務不履行により賃貸借契約を解除する場合には、契約違反が継続し、損失が生じている現状を改善するための行為であることから、管理の問題であると考えられます。
 なお、民法544条1項は、契約の解除は、当事者の一方が複数であればその全員によって行う必要があることを規定しています。そうすると、賃貸借契約の解除についても、解除権の行使は、共有者全員による必要があるようにも思われます。しかし、裁判所は、債務不履行による賃貸借契約の解除には、民法544条1項は適用されず、共有物の管理に関する事項であると判断しています(最高裁昭和39年2月25日判決)。
 以上、共有不動産の賃貸に関する重要な点について説明しましたが、これらの問題以外にも様々な点が問題となりますので、共有者間で意見がまとまらない場合には、弁護士等専門家にご相談ください。
※この投稿は、2019年12月15日時点の回答になります。ご自身の責任で情報をご利用いただきますようお願い致します。
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