相談 Consultation

共有私道路内で補修工事について

相談者No.1
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今回、共有私道路内の依然と別の部分で陥没発生、補修工事等を行いたい。
(2年前路面一部を再舗装、側溝の修繕を多数決で決め会員14名全員同意で修繕工事完了。)負担額は全員持ち分が同じなため平等に負担額を支払った。  
今回も以前と同様に工事についての文面はほぼ変わらない形で会員に通知し多数決を取った。10月からの増税もあり、返信期限を2週間設けた。以前は1か月。

市の法律相談内容
質問:ある会員から賛成反対の2択のみで工事の議論、意見調整がなされていないと指摘を受けた為、今回の場合多数決で決めてもよいのか。
市の弁護士の先生の返答:
民法第 253 条第1項
共有物に関する負担 各共有者は,その持分に応じ,管理の費用を支払い,その他共有物に 関する負担を負う。「管理の費用」とは,共有物の 維持,改良等のための必要費,有益費をいう。私道の共有者は,共有私道 の補修等共有物の管理のために必要・有益な費用等について,その持分に 応じて支払う義務を負う。
よって今回の工事は管理に値するため、多数決で決めてよい。


1.疑問点
  路面全体の再舗装ではなく、側溝付近のみの再舗装であれば『保存行為』に該当する可能性があるようなのですがどうなのでしょうか。
  また、保存行為は、共有者の同意を得る必要はない(民法第252条ただし書)。
  1人の判断で実行可能なため、共有者の同意を得る必要はないとインターネットで読んだのですが、私一人の判断で工事を決定し費用を集められるということでしょうか。

2.不明点
  多数決で可決を決められても話し合いは必要か。
  返信をもらうのに最低期間はあるのか。

齋藤 拓

齋藤 拓 弁護士(福岡県弁護士会)

1.共有物の管理と保存行為について
  民法252条は、共有物の管理について、各共有者の持分の価格に従い、その過半数で決するとする一方で、保存行為については、各共有者ができると定めています。
 共有物の管理とは、「共有物の現状を維持し、これを利用し、さらには改良してその価値を高めること」をいいます。一方、共有物の保存行為は、「単に現状を維持する行為」をいいます。
 民法が同一の条文に定めているように、「管理」と「保存行為」の区別は難しく、そのいずれに該当するか判断することは、裁判所の判断にも一貫性のないような状況であるとも考えられています。
 ただし、保存行為は、単に共有物の現状を維持する行為ですから、裁判例では、他人による共有物に対する妨害や侵害に対しては、各共有者が単独で対処できるとする判断が見受けられます。
 ご質問の私道の再舗装ですが、現状としては、陥没した状態が現状であり、これに費用を投じて補修工事を行うことは、改良に当たることから、保存行為に止まらず、管理に当たるとも十分に考えられます。そうである以上は、保存行為と判断してご相談者様のご判断で費用を投じた場合、民法上の要件を満たしていないとして、費用を集められないという事態にもなりかねません。
 ですから、補修工事を行うとして、補修工事を行う業者の選定や、その費用について、共有者間で協議したうえで、多数決で決する必要があると考えられます。

2.話し合いの必要性と返信の最低期間について
 私道の補修工事が管理に当たることを前提とすると、多数決によって決める以上、評決するための話し合いないし文書での議題に対する意見の取りまとめは必要となります。
 返信をもらうための最低期間は法定されているものではございませんが、議題に対して各共有者が検討するために必要と考えられる合理的期間と、補修工事の緊急性を勘案のうえで、相当であると考えられる期間を設定する必要があると考えます。
※この投稿は、2019年12月15日時点の回答になります。ご自身の責任で情報をご利用いただきますようお願い致します。
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