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商業用ビルのテナント募集について

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商業用ビルを所有することになったので、テナントを募集したいと考えています。
どんなことに注意したらよいでしょうか。

齋藤 拓

齋藤 拓 弁護士(福岡県弁護士会)

テナントを募集して、建物の賃貸借契約を締結する場合には、様々なトラブルを考慮して、オーナー様のご要望に応じた契約書を作成する必要があります。中でも、賃料の滞納など、テナント側に契約違反があった場合には、契約を解除して、新しいテナントの募集を検討されることになります。そのためには、テナントとの契約を「定期建物賃貸借契約」とすることも、重要な選択肢の一つです。

 建物の賃貸借契約には、普通建物賃貸借契約と、定期建物賃貸借契約の2種類があります。
 普通建物賃貸借契約では、契約期間が定められたとしても、原則として契約は更新されます。貸主が契約の更新を拒否するためには、「正当事由」という貸主の建物使用の必要性を中心とした条件が、借地借家法によって要求されます。また、正当事由が認められる場合でも立退料の提供が必要となることが一般的です。商業用ビルにおいて、事業者であるテナントを退去させるために提供しなければならない立退料は、収益を上げているテナントであれば非常に高額となることも珍しくありません。

すなわち、テナントと普通建物賃貸借契約を締結した場合には、テナントに1~2か月の賃料滞納などの契約違反があったとしても、契約を解除して建物の明け渡しを求めることは容易ではありません。たとえば、イタリアレストランを営業するテナントが、月額賃料120万円を2か月分継続的に滞納していた事案でも、裁判所は、当時の社会情勢や、今後の店舗経営の見通し、その他諸事情を考慮して、普通建物賃貸借契約の解除を認めなかったことがあります(東京地裁平成24年10月3日判決)。ですから、このようなリスクを十分に認識しないまま、テナントと普通賃貸建物借契約を締結した場合には、不測の損失を被る可能性があります。

 一方、定期建物賃貸借契約は、定められた契約期間が満了すれば契約は更新されることのない契約です(当事者の合意で再度契約を締結することは可能です。)。賃料の滞納その他契約違反を度々起こすテナントには、最低でも契約期間の満了時に退去させて、新しいテナントを募集できるようにしておけば、オーナー様の損失の拡大を防ぐことができます。

 このように、契約形態の選択により賃料収入の確保を図ったり、その他契約の条件をオーナー様に有利に定める契約書の作成は、安定的な不動産賃貸経営を営む上で不可欠となります。オーナー様それぞれのご要望に応じた建物賃貸借契約書を作成するために、弁護士等専門家へのご相談をお勧めいたします。
※この投稿は、2019年12月08日時点の回答になります。ご自身の責任で情報をご利用いただきますようお願い致します。
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