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契約の解除

相談者No.2103
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先日居住用の中古戸建て購入のため、売買契約を締結し、現在その引渡しを待っている状況です。既に金融機関との融資手続きも完了しております。この段階で売主(共有持分)の一方が意思判断能力がないと司法書士に見なされ成年後見手続きに入ることとなり、それを受けた他方売主より引渡し日変更(約4ヶ月)の提案を受けました。諸事情もありこれを機会に契約解除、違約金の請求(契約上売買代金の10%)を行うつもりですが、この主張は正当なものと認められますでしょうか。解除を申し入れる理由としては、予定していたリフォームコストの大幅上昇と、契約不安定期間の長期化、建物劣化損傷の進行です。

秋山直人

秋山直人 弁護士(第二東京弁護士会)・宅地建物取引士・不動産鑑定士・その他

売主である共有者の一人が意思能力がないということであれば、そもそも、当該共有者との間の売買契約は無効です(民法3条の2)。

従いまして、約4か月待って、成年後見人が付くのを待ってから改めて契約するというのが穏当だと思います。

他の共有者との間では売買契約が有効ですが、共有持分のみの売買となるので、他の共有者に対して無理に契約どおりの期日での履行を求めても、ご相談者様にとってもリスクが大きいと思います。

契約解除、違約金の請求をするには、他の共有者に、契約どおりの期日での履行を求めて、それに応じないといことが必要になります。

例えば、意思能力がない人の持ち分が3分の1、ある人の持ち分が3分の2と仮定すると、ご相談者様としては、意思能力のある売主に対して、持ち分3分の2を約定の決済期日に引き渡すよう求めること(それに応じない場合には売買契約解除、違約金請求)は一応可能と考えられますが、持ち分3分の2に相当する代金3分の2も支払う必要があり、持ち分3分の1を買える確実性がないのに、持ち分3分の2だけ買うのはリスクがあるということです。金融機関も、そのような状況であれば、融資に応じない可能性もあります。

予定していたリフォームコストの大幅上昇というのは、売主側の責任ではないと思われますので、それを理由に契約解除、違約金請求というのは無理があるでしょう。

4か月延期となってその分建物の劣化損傷が進行することを理由に、決済期日の延期に応じるかわりに、多少の売買代金減額の交渉をすることはあり得るかもしれません。

民法
第三条の二 法律行為の当事者が意思表示をした時に意思能力を有しなかったときは、その法律行為は、無効とする。
※この投稿は、2023年05月04日時点の回答になります。ご自身の責任で情報をご利用いただきますようお願い致します。

相談者No.

2103

ご回答有り難うございます。他方売主に売却意向がある以上、解除主張が困難なこと理解しました。買主としては、当然ながら、決済期日の延期に応じず、無効解除(その場合には違約金?を請求予定です)できる理解ですが宜しいでしょうか。4ヶ月間本契約に拘束されるリスクは高いと考えております。
秋山直人

秋山直人 弁護士(第二東京弁護士会)・宅地建物取引士・不動産鑑定士・その他

「買主としては、当然ながら、決済期日の延期に応じず、無効解除(その場合には違約金?を請求予定です)できる理解ですが宜しいでしょうか」

→例えば、ご相談者様をXとして、意思能力がない人Aの持ち分が3分の1、問題ない人Bの持ち分が3分の2と仮定すると、X-A間の売買契約は無効、X-B間の売買契約は有効と考えられます。

Bは、自身の持ち分3分の2をXに決済期日に引き渡すのであれば、契約違反にはならないと考えられるので、Xは、Bに対して契約違反を理由に一方的に契約を解除し、違約金を請求することはできないと考えられます。

他方、X-A間の売買契約は無効ですから、当然、XはAに対して違約金の主張はできません。

以上から、XがX-B間の売買契約について、契約違反による解除を主張し、違約金を請求することは困難と考えられますので、Xとしては、決済期日の延長に応じられないのであれば、一方的にではなく、Bと交渉することによって、売買契約の合意解除を目指すべきでしょう。

Xにとって、Aの持分を取得できないことの不利益は大きいので、事情が事情ということで、Bも合意解除に応じる可能性はあるように思います。

従いまして、違約金の請求はせず、穏便に合意解除をして手付金を返してもらい、売買契約をなかったことにするのが良いと思います。

回答はこれで終了とさせていただきます。


※この投稿は、2023年05月04日時点の回答になります。ご自身の責任で情報をご利用いただきますようお願い致します。
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