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所有者不明地の時効取得について

相談者No.64
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ご相談よろしくお願い申し上げます。
都心で賃貸レジ用地を探索しておりますが、ある土地が2方向接道しているように見えるのですが、一方は道路際の皮一枚3平米程度が登記上他人地となっており、ここが接道できないと事業的にかなり収支が悪くなります。しかし、その他人地の上には取得検討中の土地にある古屋やブロック塀が(越境して?)建っており、この建物は築40年です。この他人地の登記簿甲区には、明治39年の家督相続により取得した旨、昭和12年に登記されており、それ以降は甲乙ともに何も変動がありません。当然に、この他人地所有者は既に死去しているとみられ、3平米しかない残地ですので、その後相続等の対象となっているかも調査しない限りはわかりません。対象地に古屋が40年以上たっているとなると、時効取得は認められるのかとは思いますが、所有者をどう特定するのか、戸籍謄本見ても相続人は相当人数に達する可能性もあり、これらにどう告知すべきなのか、期間はどの程度かかるのか、時効を確実に成立させるために留意すべき点はあるのか、時効取得できないリスクがあるとすれば何なのかといった点を教えていただけましたら幸いです。
何とぞよろしくお願い申し上げます。

溝口 矢

溝口 矢 弁護士(東京弁護士会)

弁護士の溝口と申します。

ご質問の項目ごとに回答いたします。

<所有者の特定>
残地の所有者については、確認できている時点より後の相続人の調査をすることになるので、弁護士等が行える職務上請求により戸籍を取得することが考えられます。

<告知>
相続人が多数にわたる場合、その全員が共有していることになります。大変ではありますが各人に地道に告知していくほかないでしょう。

<期間>
事案次第ですので明言できませんが、相続人の数が多い、相続人が海外に在住している等の事情により、長期間にわたる可能性があります。

<リスク>
本件で時効取得できるかどうかは個別具体的な事情によるところが大きいですが、例えば次のようなことが考えられます。
所有権の取得時効が認められるための要件のひとつとして、所有の意思をもって占有していることがあげられます。
所有の意思のある占有を自主占有、所有の意思のない占有を他主占有といいますが、いずれにあたるかにつき、判例は、占有を成立させた原因ないし事情から客観的・外形的に判断するとしています。
そのため、古屋の権利関係によっては(たとえば、残地を古屋の所有者が賃借している場合)他主占有にあたり、取得時効が認められない可能性がございます。

<その他>
時効を確実に成立させるために留意すべき点はあるかというご質問ですが、これまでの事実関係によるところも大きいので何ともいえないところです。
抽象論としては、残地につき占有者が真の所有者であれば通常とらない態度を示すことの防止に努め、他主占有であると認定されないようにする対応をとるということが一応考えられます。
※この投稿は、2020年03月27日時点の回答になります。ご自身の責任で情報をご利用いただきますようお願い致します。

相談者No.

64

溝口先生
ご回答頂きまして誠にありがとうございます。
特定と告知に関してですが、

特定は、戸籍謄本並びに住民票の情報だけで時効取得の告知要件満たしていますか?
本件のように明治の時代から戸籍と住民票で追えるものでしょうか?

告知ですが、内容証明などでも一定期間内に回答が無い場合、所有の意思無いと見做してしまうことは可能ですか?

宜しくお願い申し上げます。
溝口 矢

溝口 矢 弁護士(東京弁護士会)

再質問ありがとうございます。
ご回答差し上げます。

<1点目のご質問について>
ご質問内の「告知要件」とは時効の援用(民法145条)のことを想定されていると思われますが、戸籍謄本等の取得のみでは時効を援用したとはいえません(本件での援用については下記回答参照)。

<2点目のご質問について>
明治初頭までの戸籍であれば残っているかぎり取得は可能です。

<3点目のご質問について>
所有の意思については、ご質問者様側が取得時効を主張するにあたり充足しなければならない要件です。そのため、相手の意思は問題となりません。
ただし、所有者が誰か分からない場合や所有者と十分に協議できていない場合等に時効取得を理由に話を進めると、後になって紛争に繋がるおそれがあります。そこで、所有権移転登記請求訴訟により、残地の所有権移転登記をしておくことが考えられます。この裁判の際に、時効により所有権の取得をしたと主張することで時効を援用したことになります。

実際にどこまでやるかは、個別具体的事情を前提に考えられるリスクやコストを踏まえてのご判断になるかと思います。
必要に応じて弁護士への相談もご検討されてみてください。
※この投稿は、2020年03月29日時点の回答になります。ご自身の責任で情報をご利用いただきますようお願い致します。

相談者No.

64

溝口先生
ご回答いただきまして誠にありがとうございます。
私のご質問の仕方が悪かったと思います。
申し訳ございません。

時効取得の要件と申しますのは、「戸籍謄本」と「住民票」で追った相続権利者の中に、真なる所有者が含まれているとは限らない、もっといえば、そんな昔の「戸籍謄本」や「住民票」が正しく記載されているとも限らないし、もしかしたら残っていないこともあり得るかと思います。そういう前提にたった場合に、「戸籍謄本」と「住民票」をもとに告知を行うことで、当該物件の「時効による所有権移転登記」が受理されるのかということです。登記官から、「相続対象者ってこれだけなの?他にいないのか証明してよ。」と言われてしまうとそれは「不可能」なのだと思います。この「登記移転」には、「訴訟」が必要なのだとしたら、その「被告人」は上記で足りるのかということにもなろうかと思います。

内容証明の件ですが、相手の意思は関係ない旨理解いたしました。ただ、「訴訟」まで起こすとなると、そもそも本件、その被告人が多数でかつ出頭など絶対にしてこないと思います。よって「時間のとお金の無駄」でしかありません。実務上は、内容証明を送り付けて、住所不明もしくは回答無しとなるのだと思います。この様な手続きをもって「移転登記」の原因証書足りえるのかという意味合いです。いかがでしょうか?

つまり、本件土地で、所有者不明の実態からして、3平米しかない残地に権利を主張するものなど存在しないと思ってますが、実際に購入した場合に、一定の期間内に、一定の費用内で、登記移転まで完了できる見込みがたてられるのか、全くたてられないのかという観点でのご質問です。

何とぞよろしくお願い申し上げます。
溝口 矢

溝口 矢 弁護士(東京弁護士会)

何度もお手数をかけてしまい申し訳ございません。

新たに頂いたご質問は、専ら登記の可否についてのお話になるので司法書士の専門領域になるところです。
そのため、弁護士としてお話できる限りでご回答差し上げます。

本件の問題を確実にクリアにするという観点からは、やはり訴訟によることになると思います。
込み入ったお話になるので前回の回答では立ち入りませんでしたが、被告についてのお話も含め、国土交通省のマニュアル(https://www.mlit.go.jp/common/001178712.pdf)の80頁以下が参考になります。
なお、判決を得られれば、被告の出頭等の有無にかかわらず、判決の効力に基づいて登記をできますので、適切な訴訟手続を踏めばその点は問題ございません。

国土交通省のマニュアルも踏まえますと、基本的に訴訟によって判決を得て話を進めるのが穏当だと考えております。
ご質問者様のお考えのような形で進めることも投資家の判断としては十分にあり得ますし実際的でありますが、少なくとも個別具体的な事情が分からずリスク等を検討できない本サイトのやりとりでは、弁護士として「問題ない」とお約束することはできかねるところです。

ただし、これも弁護士によって考え方が異なり得るところです。慎重なスタンスの者からのひとつの見解として参考にして頂ければ幸いです。
※この投稿は、2020年03月29日時点の回答になります。ご自身の責任で情報をご利用いただきますようお願い致します。

相談者No.

64

溝口先生
何度もご回答賜り誠にありがとうございます。
大変参考になりました。
どうもありがとうございました。
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