専門家 Specialist

齋藤 拓

資格
弁護士(福岡県弁護士会)
ベストアンサー数
0 回
相談回答数
25 回

弁護士(福岡県弁護士会所属)

●得意分野

債権回収、相続

●趣味

ブラジリアン柔術

●一言

私が一番大事にしていることは、お客様との信頼関係です。

日々の業務や生活の中で、お客様が直面するあらゆる問題に対して、最善のアドバイスをするために、粉骨砕身努めて参ります。

齋藤 拓 さんの経歴

2006年3月 中央大学法学部国際企業関係法学科 卒業
2012年3月 中央大学法科大学院 修了
2014年9月 司法試験 合格
2015年12月 司法修習 修了(68期)
2016年2月 弁護士登録(福岡県弁護士会) 弁護士法人Martial Arts 入所

相談回答

取得物件の入居者立ち退きについて

2020/10/01

いつもお世話になっております。 都心で賃貸マンションの開発をするにあたり、更地を購入するのではなく、既存の築古アパートを入居者付きで購入し、立ち退きを行って、立替を行おうかと考えております。 この様な物件は、周辺マーケットに比して、既存の賃料が大幅に安いがゆえに、収益還元により、更地価格相場より...
A お世話になります。 ご相談に回答させていただきます。 賃上げ交渉を行わずに「すぐに立ち退き交渉」を行った場合と比較して、立ち退きが認められにくくなる = 正当事由の補完に悪影響となる可能性はあると思われます。 1 参考となる裁判例があります。 JR水道橋駅近郊の商業地域という土地高度利用の可能な位置に、昭和24年頃に建築された木造建物(本件建物)の賃貸人が、本件建物の敷地と隣接する土地にビルを建てて有効活用することを計画し、写真印刷等を事業とする賃借人に立ち退きを求めました。 裁判所は、賃貸人と賃借人との間で過去に争われた賃料増額請求訴訟での和解において、賃料が合意されてから4年余りしか経過していないことも考慮し、賃貸人が本件建物の明渡しを受ける必要性が、賃借人がこれを使用する必要性に勝るとは認められず、正当事由はないと判断しました(東京地方裁判所平成3年12月19日判決(判例時報1434号87頁))。 賃料増額請求訴訟において合意がなされたことが、正当事由の補完に悪影響となったと考えられます。 2 正当事由の有無は、賃貸人が建物を必要とする事情と、賃借人が建物を必要とする事情を基本的な要素として比較して、判断されます。 しかし、これだけでは判断できない場合には、建物の賃貸借に関する従前の経過、建物の利用状況、建物の現況、立退料を補完的な要素として、正当事由の有無が判断されます(借地借家法第28条)。 賃上げ交渉は、建物の賃貸借に関する従前の経過として、正当事由の補完的な要素になると思われます。 3 現在、建替え・再開発の必要性が、賃貸人側の必要性となることは、当然に認められています。 もっとも、明渡し請求が認められると賃借人の生活や営業の基盤が奪われることから、建替え・再開発の計画は、賃借人の生活や営業の基盤を失わせるだけの必要かつ具体的なものでなければならないと考えられています。 計画の必要性や具体性が認められないことを理由として正当事由が否定された事案は多く見られます。 賃貸人が賃料の増額を求めるということは、賃貸借契約の継続を受け容れられる状況にあると認められて、上記裁判例のように、建替え・再開発の必要性がそれほど高くないと判断されてしまうおそれがあります。 4 ですから、建替えの目的で築古アパートを購入されるのであれば、賃上げ交渉を行われることは必ずしも妥当ではありません。 賃貸マンションの建築をご計画なのであれば、築古アパートの老朽化による危険性を十分に調査され(必要性)、また建築計画をできる限り具体化していただいた上で(具体性)、立ち退き交渉を開始される必要があります。 以上

戸建て賃貸時、庭木枯れの負担について

2020/02/21

ご相談です。 戸建て賃貸で入居者の退去立ち合いにて庭木が枯れていたことが分かりました。 庭木は4m~5mくらいのものでしたが、枯れてしまい、地面から40~50cmくらいのところからなくなっています。。 なくなってしまった理由はわかりませんが、入居者が故意に切ったものではないことは残りの部分からわかります...
入居者が、庭木が枯れ始めているのにそのことを管理会社や賃貸人に知らせなかった場合には、庭木に関する修復費用を入居者の負担とさせることができる場合があります。 1 庭の植栽も賃貸借契約の目的物です。 契約書や重要事項説明書などに庭の植栽について記載がなくても、一戸建て物件の賃貸借契約においては、庭の植栽についても契約の目的物に含まれると考えられています。そうすると、入居者は、庭の植栽の保存について、賃借人として求められる通常の注意義務を負っていることになります。 2 庭木が枯れ始めた場合の入居者の義務 そして、庭木が枯れ始めた場合には、入居者は、その変化の状況に気付き、管理会社や賃貸人に知らせて対策をする機会を与える義務があるとされます。 したがいまして、入居者がこの義務を怠った場合には、庭木に関する修復費用を入居者の負担とさせることができます。 3 東京簡裁平成21年5月8日判決 以上のご回答は、東京簡裁平成21年5月8日判決を根拠としております。裁判所は、庭の松が枯れた事案において、上記のとおり説明し、賃借人に対し、庭木に関する修復費用として6万円の支払い命じています。 また、この裁判例は、国土交通省が公表している「原状回復を巡るトラブルとガイドライン(再改訂版)」56頁において紹介されていることから、法的な根拠としては信頼性が高いと考えられます。

共有私道路内で補修工事について

2019/12/15

今回、共有私道路内の依然と別の部分で陥没発生、補修工事等を行いたい。 (2年前路面一部を再舗装、側溝の修繕を多数決で決め会員14名全員同意で修繕工事完了。)負担額は全員持ち分が同じなため平等に負担額を支払った。   今回も以前と同様に工事についての文面はほぼ変わらない形で会員に通知し多数決を取った。...
1.共有物の管理と保存行為について   民法252条は、共有物の管理について、各共有者の持分の価格に従い、その過半数で決するとする一方で、保存行為については、各共有者ができると定めています。  共有物の管理とは、「共有物の現状を維持し、これを利用し、さらには改良してその価値を高めること」をいいます。一方、共有物の保存行為は、「単に現状を維持する行為」をいいます。  民法が同一の条文に定めているように、「管理」と「保存行為」の区別は難しく、そのいずれに該当するか判断することは、裁判所の判断にも一貫性のないような状況であるとも考えられています。  ただし、保存行為は、単に共有物の現状を維持する行為ですから、裁判例では、他人による共有物に対する妨害や侵害に対しては、各共有者が単独で対処できるとする判断が見受けられます。  ご質問の私道の再舗装ですが、現状としては、陥没した状態が現状であり、これに費用を投じて補修工事を行うことは、改良に当たることから、保存行為に止まらず、管理に当たるとも十分に考えられます。そうである以上は、保存行為と判断してご相談者様のご判断で費用を投じた場合、民法上の要件を満たしていないとして、費用を集められないという事態にもなりかねません。  ですから、補修工事を行うとして、補修工事を行う業者の選定や、その費用について、共有者間で協議したうえで、多数決で決する必要があると考えられます。 2.話し合いの必要性と返信の最低期間について  私道の補修工事が管理に当たることを前提とすると、多数決によって決める以上、評決するための話し合いないし文書での議題に対する意見の取りまとめは必要となります。  返信をもらうための最低期間は法定されているものではございませんが、議題に対して各共有者が検討するために必要と考えられる合理的期間と、補修工事の緊急性を勘案のうえで、相当であると考えられる期間を設定する必要があると考えます。

問い合わせ先

ホームページ
https://www.martial-arts.jp/information/fukuoka.htm
事務所名
弁護士法人Martial Arts 福岡支店
電話番号
092-402-0933092-402-0933

取得物件の入居者立ち退きについて

2020/10/01

いつもお世話になっております。 都心で賃貸マンションの開発をするにあたり、更地を購入するのではなく、既存の築古アパートを入居者付きで購入し、立ち退きを行って、立替を行おうかと考えております。 この様な物件は、周辺マーケットに比して、既存の賃料が大幅に安いがゆえに、収益還元により、更地価格相場より...
A お世話になります。 ご相談に回答させていただきます。 賃上げ交渉を行わずに「すぐに立ち退き交渉」を行った場合と比較して、立ち退きが認められにくくなる = 正当事由の補完に悪影響となる可能性はあると思われます。 1 参考となる裁判例があります。 JR水道橋駅近郊の商業地域という土地高度利用の可能な位置に、昭和24年頃に建築された木造建物(本件建物)の賃貸人が、本件建物の敷地と隣接する土地にビルを建てて有効活用することを計画し、写真印刷等を事業とする賃借人に立ち退きを求めました。 裁判所は、賃貸人と賃借人との間で過去に争われた賃料増額請求訴訟での和解において、賃料が合意されてから4年余りしか経過していないことも考慮し、賃貸人が本件建物の明渡しを受ける必要性が、賃借人がこれを使用する必要性に勝るとは認められず、正当事由はないと判断しました(東京地方裁判所平成3年12月19日判決(判例時報1434号87頁))。 賃料増額請求訴訟において合意がなされたことが、正当事由の補完に悪影響となったと考えられます。 2 正当事由の有無は、賃貸人が建物を必要とする事情と、賃借人が建物を必要とする事情を基本的な要素として比較して、判断されます。 しかし、これだけでは判断できない場合には、建物の賃貸借に関する従前の経過、建物の利用状況、建物の現況、立退料を補完的な要素として、正当事由の有無が判断されます(借地借家法第28条)。 賃上げ交渉は、建物の賃貸借に関する従前の経過として、正当事由の補完的な要素になると思われます。 3 現在、建替え・再開発の必要性が、賃貸人側の必要性となることは、当然に認められています。 もっとも、明渡し請求が認められると賃借人の生活や営業の基盤が奪われることから、建替え・再開発の計画は、賃借人の生活や営業の基盤を失わせるだけの必要かつ具体的なものでなければならないと考えられています。 計画の必要性や具体性が認められないことを理由として正当事由が否定された事案は多く見られます。 賃貸人が賃料の増額を求めるということは、賃貸借契約の継続を受け容れられる状況にあると認められて、上記裁判例のように、建替え・再開発の必要性がそれほど高くないと判断されてしまうおそれがあります。 4 ですから、建替えの目的で築古アパートを購入されるのであれば、賃上げ交渉を行われることは必ずしも妥当ではありません。 賃貸マンションの建築をご計画なのであれば、築古アパートの老朽化による危険性を十分に調査され(必要性)、また建築計画をできる限り具体化していただいた上で(具体性)、立ち退き交渉を開始される必要があります。 以上

戸建て賃貸時、庭木枯れの負担について

2020/02/21

ご相談です。 戸建て賃貸で入居者の退去立ち合いにて庭木が枯れていたことが分かりました。 庭木は4m~5mくらいのものでしたが、枯れてしまい、地面から40~50cmくらいのところからなくなっています。。 なくなってしまった理由はわかりませんが、入居者が故意に切ったものではないことは残りの部分からわかります...
入居者が、庭木が枯れ始めているのにそのことを管理会社や賃貸人に知らせなかった場合には、庭木に関する修復費用を入居者の負担とさせることができる場合があります。 1 庭の植栽も賃貸借契約の目的物です。 契約書や重要事項説明書などに庭の植栽について記載がなくても、一戸建て物件の賃貸借契約においては、庭の植栽についても契約の目的物に含まれると考えられています。そうすると、入居者は、庭の植栽の保存について、賃借人として求められる通常の注意義務を負っていることになります。 2 庭木が枯れ始めた場合の入居者の義務 そして、庭木が枯れ始めた場合には、入居者は、その変化の状況に気付き、管理会社や賃貸人に知らせて対策をする機会を与える義務があるとされます。 したがいまして、入居者がこの義務を怠った場合には、庭木に関する修復費用を入居者の負担とさせることができます。 3 東京簡裁平成21年5月8日判決 以上のご回答は、東京簡裁平成21年5月8日判決を根拠としております。裁判所は、庭の松が枯れた事案において、上記のとおり説明し、賃借人に対し、庭木に関する修復費用として6万円の支払い命じています。 また、この裁判例は、国土交通省が公表している「原状回復を巡るトラブルとガイドライン(再改訂版)」56頁において紹介されていることから、法的な根拠としては信頼性が高いと考えられます。

共有私道路内で補修工事について

2019/12/15

今回、共有私道路内の依然と別の部分で陥没発生、補修工事等を行いたい。 (2年前路面一部を再舗装、側溝の修繕を多数決で決め会員14名全員同意で修繕工事完了。)負担額は全員持ち分が同じなため平等に負担額を支払った。   今回も以前と同様に工事についての文面はほぼ変わらない形で会員に通知し多数決を取った。...
1.共有物の管理と保存行為について   民法252条は、共有物の管理について、各共有者の持分の価格に従い、その過半数で決するとする一方で、保存行為については、各共有者ができると定めています。  共有物の管理とは、「共有物の現状を維持し、これを利用し、さらには改良してその価値を高めること」をいいます。一方、共有物の保存行為は、「単に現状を維持する行為」をいいます。  民法が同一の条文に定めているように、「管理」と「保存行為」の区別は難しく、そのいずれに該当するか判断することは、裁判所の判断にも一貫性のないような状況であるとも考えられています。  ただし、保存行為は、単に共有物の現状を維持する行為ですから、裁判例では、他人による共有物に対する妨害や侵害に対しては、各共有者が単独で対処できるとする判断が見受けられます。  ご質問の私道の再舗装ですが、現状としては、陥没した状態が現状であり、これに費用を投じて補修工事を行うことは、改良に当たることから、保存行為に止まらず、管理に当たるとも十分に考えられます。そうである以上は、保存行為と判断してご相談者様のご判断で費用を投じた場合、民法上の要件を満たしていないとして、費用を集められないという事態にもなりかねません。  ですから、補修工事を行うとして、補修工事を行う業者の選定や、その費用について、共有者間で協議したうえで、多数決で決する必要があると考えられます。 2.話し合いの必要性と返信の最低期間について  私道の補修工事が管理に当たることを前提とすると、多数決によって決める以上、評決するための話し合いないし文書での議題に対する意見の取りまとめは必要となります。  返信をもらうための最低期間は法定されているものではございませんが、議題に対して各共有者が検討するために必要と考えられる合理的期間と、補修工事の緊急性を勘案のうえで、相当であると考えられる期間を設定する必要があると考えます。

購入した物件について

2019/12/15

不動産業者Xとの間で、Xが建築する予定の鉄骨コンクリート造の地上3階建、地下1階の建物とその敷地を、転売目的であることをXに伝えたうえで、銀行からの借入金を合わせて3億円で購入しました。しかし、購入から約1年後、2~3日大雨が降り続いた際に、地中から侵入したと思われる水が地下1階の床面にどんどん...
民法には、不動産のような特定物に、個々の取引に応じて通常では発見できないといえる欠陥(隠れた瑕疵といいます。)があった場合には、瑕疵担保責任という売主が負う責任が定められています。この責任には、①瑕疵のない目的物を買うことができると信じたことによって買主が被った損害(信頼利益といいます。)の賠償責任と、②契約の目的が達成できない場合の、契約解除に基づく売買代金の返還義務の2つの責任があります。そして、この瑕疵担保責任以外に、瑕疵のない目的物の引渡義務と、瑕疵の修補義務を認めるためには、原則として特約で定める必要があります。  2020年4月からは、民法の瑕疵担保責任の規定は改正されて、契約不適合責任という売主の責任が新しく定められました。契約不適合責任には、これまで特約で定める必要があった目的物の引渡義務と修補義務(新民法562条1項)のほか、売買代金の減額請求(同法563条1項、2項)が認められることになりました。また、損害賠償責任の範囲は、買主が契約に適合する目的物を取得できれば得られるはずであった利益(たとえば転売利益)にも及び得ることになりました(同法415条、同法564条)。さらに、契約の解除は、契約の目的が達成できない場合に限定されないことになりました(同条)。  本件では、地下の排水設備が備え付けられていなかったのですから、一般の買主にとっては通常発見することができない欠陥があったということができます。また、地下の排水設備の設置のために工事をやり直すことは、事実上不可能であるとの鑑定結果が出ているようです。したがって、現行の民法の下では、契約を解除して、売買代金の3億円の返還請求と、銀行借入金の利息に相当する金額など、信頼利益の損害賠償請求が認められると考えられます(神戸地裁平成9年9月8日判決)。これに加えて、新しい民法の下では、Xは転売目的であることを認識していましたから、転売利益についても損害賠償請求できることになります。  このように、購入された物件に欠陥などが見つかってお悩みの場合には、弁護士にご相談ください。

別荘の共同相続についての質問です

2019/12/15

親の急逝に伴い、国内リゾート地にある別荘を、弟と妹の3人で共同相続しました。3人で話し合って、賃貸しようと考えています。どのような点に気を付ければよいでしょうか。
共同相続した不動産は、相続人との間で法定相続分に応じた「共有」となります。不動産等、物を「共有」という状態で所有することになった場合には、その処分・変更には共有者全員の同意が必要になります。また、共有物の管理に関する事項は、各共有者の持分の価格に従って、その過半数で決める必要があります。ただし、管理には至らない保存行為に止まる場合には、各共有者が単独で行うことができます。  本件では、共有不動産である別荘の賃貸借契約について、①賃貸借契約の締結、②賃料の変更、③賃貸借契約の解除が、それぞれ共有物の処分に当たるのか、それとも管理又は保存行為に当たるのかという問題を取り上げて説明します。  第一に、①賃貸借契約の締結については、別荘の賃貸借契約の内容に左右されるものの、建物所有目的の一般的な普通建物賃貸借契約であれば、借地借家法により借主の賃借権が厚く保護されることになることから、処分に当たると考えられます。  これに対して、普通建物賃貸借契約の更新については、一般的な自動更新条項に基づいて当事者により特に通知がなければ自動更新されるのであれば、建物の現状に変更が加えられるわけではないことから、管理又は保存行為に当たると考えられます。一方、自動更新条項によらず、新たな合意により更新されるのであれば、その合意の内容次第で、処分であるのか、管理又は保存行為であるのかが判断されると考えられます。  第二に、②賃料の変更については、一般的に管理であると考えられますが、大型の建物のサブリースにおける賃料の変更は、管理ではなく変更とされる場合があることには注意が必要です(東京地裁平成14年7月16日判決)。  第三に、③賃借人の賃料滞納等、債務不履行により賃貸借契約を解除する場合には、契約違反が継続し、損失が生じている現状を改善するための行為であることから、管理の問題であると考えられます。  なお、民法544条1項は、契約の解除は、当事者の一方が複数であればその全員によって行う必要があることを規定しています。そうすると、賃貸借契約の解除についても、解除権の行使は、共有者全員による必要があるようにも思われます。しかし、裁判所は、債務不履行による賃貸借契約の解除には、民法544条1項は適用されず、共有物の管理に関する事項であると判断しています(最高裁昭和39年2月25日判決)。  以上、共有不動産の賃貸に関する重要な点について説明しましたが、これらの問題以外にも様々な点が問題となりますので、共有者間で意見がまとまらない場合には、弁護士等専門家にご相談ください。

補修工事における近隣トラブルについて

2019/12/15

当社が所有する商業ビル(Aビル)は建築後30年以上が経過し、外壁の一部が剝落しているため、雨水による漏水を防止する補修工事が必要な状況です。しかし、外壁補修工事のためには、境界線一杯に建つ隣の商業ビル(Bビル)の非常階段と屋上に立ち入る必要があるところ、Bビルの所有者が立入りを認めてくれません。...
民法209条1項本文により、外壁補修工事に必要な範囲でBビルの非常階段と屋上に立ち入ることを請求できます。Bビルの所有者の承諾が得られない場合は、裁判により承諾に代えて判決を得ることが考えられます。  民法209条1項本文は、①土地の所有者が、②境界又はその付近において建物の修繕などのために、③必要な範囲内で、隣地の使用を請求することができると定めています。これを、隣地使用権といいます。  他人の土地を、自らの建物などのために使用することは原則としてできません。しかし、隣地の使用が一切できないと、境界付近に建物を建築等できず、土地の有効利用に支障が生じます。そこで、隣接者間の互譲を趣旨とする隣地使用権が認められています。  本件では、ご相談者様がAビルの敷地の所有権者であれば①の要件を満たしますし、仮に所有権者ではなかったとしても、土地の賃借権者にも隣地使用権が認められています。また、Aビルの外壁補修工事は建物の修繕に当たるので②の要件も満たします。そして、③必要な範囲内とは、工事の規模、緊急性、隣地の所有者の受ける不利益など、様々な事情を総合的に考慮して判断されますが、Aビルの外壁補修工事はやむを得ない事情によるものですから、必要な範囲内といえます。   もっとも、民法209条1項ただし書は、隣人の承諾がなければ、その住家に立ち入ることができないと定めています。住居への立入りはプライバシー侵害となることから、隣地使用権には制約があります。  本件における商業ビルの非常階段と屋上の利用は、住居への立入りのようなプライバシー侵害は生じないといえることから、Bビルの所有者の承諾は必要ではないと考えられます(東京地裁平成11年1月28日判決)。  したがって、Aビルの外壁補修工事は、Bビルの所有者の承諾なしに認められると考えられます。なお、民法209条2項は、隣地の使用によって隣人が損害を受けた場合はその償金を請求することができると定めていますので、Bビルの所有者に外壁補修工事によって被った損害があれば、償金の支払が必要になります。

アパートの建て替えとサブリースについて

2019/12/15

アパートの大家をしている60歳代の父が、アパートの建て替えとサブリースが相続税対策になると不動産業者から誘われて、建て替え費用の融資を銀行から受けるので連帯保証人になってほしいと私に依頼してきました。業者からは、「安定した家賃収入を保証する」などと勧誘されていると説明されましたが、このような契約...
家賃収入の減少などのリスクを理解したうえで、建て替え費用の返済期間中から返済後に至っても、安定した家賃収入が得られる根拠があるかどうか、しっかりと検討する必要があります。  サブリースとは、不動産業者が所有者からアパートなど建物を借り上げ、入居者を募集して転貸する契約のことをいいます。「長期間借り上げる」、「安定した家賃収入を保証する」などと謳う業者に勧誘されて、銀行などから融資を受けてアパートを建築し、サブリースを結ぶケースが多く見受けられます。  しかし、実際は、銀行からの借入れの返済中であるにもかかわらず、家賃の減額などを業者から要求されて、返済に行き詰るというトラブルが増加して社会問題となりました。アパート経営は、経済状況などにより稼働率や家賃相場が下がることが避けられません。また、建物の老朽化に伴った修繕費用は、経済的な負担として重くのしかかります。話が違うではないかと抗議したくもなりますが、業者は、一定期間はアパートを借り上げて、家賃を保証するとしつつ、実はその期間中の家賃の減額請求ができるという契約条項が定められていることがあります。つまり、業者は、契約書でしっかりと損失を被るリスクを回避しています。  さらに、サブリースは、通常の不動産賃貸借と同様に、借地借家法が適用されます。借地借家法は、主に借主を保護する法律ですが、サブリースの場合、借主は業者です。消費者契約法などの個人の消費者を保護する法律と同様に、弱い立場の借主を保護する法律が借地借家法であるはずなのに、個人の貸主よりも強い立場にある不動産業者が借主であるため、業者を保護する結果となります。  たとえば、借地借家法には賃料減額請求権が定められていますが、これを業者が行使することも可能となります。現状では、裁判所も、サブリースにも借地借家法が適用され、不動産業者による賃料減額請求が可能であると判断しています(最高裁平成15年10月21日判決)。  このように、サブリースは、結局、不動産業者と銀行が利益を得て、損失はすべて不動産の所有者が被る破目になりかねない危険性をもっていますから、契約条件その他資料を吟味したうえで、慎重にご判断になる必要があります。

宅建士の表示の必要性について

2019/12/15

当社はマンションの販売業者ですが、販売業務を代理業者に委託しています。買主に重要事項説明を行う際、重要事項説明書には、その宅建業者と宅建士に加えて、当社の名称と宅建士も表示する必要があるのでしょうか。
土地又は建物の販売等に当たり、宅建業者は、売買契約が成立するまでの間に、買主に対して、重要事項説明書を交付して説明しなければなりません(宅地建物取引業法(以下「法」といいます。)35条1項)。また、重要事項説明書には、宅建士の記名・押印が必要となりますし(同条5項)、この説明義務の責任の主体である宅建業者の記名・押印もなされるのが一般的です。  不動産取引の実務においては、物件の所有者である宅建業者が、自ら直接販売業務を行う取引形態だけではなく、複数の宅建業者が取引に関与する場合が少なくありません。たとえば、分譲マンションの販売では、売主である数社の宅建業者があり、その数社がそれぞれ販売代理業者との間で業務委託契約を締結して、販売に係る営業活動を委託するというケースが見受けられます。  では、このように複数の宅建業者が取引に関与する場合には、どの業者が重要事項説明義務を負い、その名称と宅建士を表示する必要があるのでしょうか。  法35条1項は、宅建業者が、宅建士をして重要事項説明書を交付し、説明させなければならないと定めているのみですから、複数の宅建業者が取引に関与する場合に、その一部の宅建業者が義務を免れることは規定していません。また、取引に関与している以上、そのように解釈することも困難であると思われます。  この点に関して、取引に関与する宅建業者のうち、いずれか1社の宅建士が重要事項説明書の交付・説明を行えばよいと考えられてはいますが、これは、あくまでも重要事項説明の目的が取引に関する重要事項を事前に理解させることにあるので、何度も説明を行ったり、複数の宅建士が立ち合う必要はないとの考慮によるものです。  ですから、取引に関与するすべての宅建業者が、宅建士をして重要事項説明義務を負い、その内容に責任を負っていると解釈すべき以上、すべての宅建業者が重要事項説明書にその名称及び宅建士を表示する必要があると解釈されます。  したがって、ご相談のケースにおいても、代理業者の名称及び宅建士の表示のみならず、売主の販売業者の名称及び宅建士の表示も必要になると考えられます。

住宅ローンの選択について

2019/12/15

結婚して家族ができたので、はじめて住宅ローンを組み、マンションを購入したいと思っています。住宅ローン商品は、どのように選んだらよいのでしょうか。
住宅ローン商品の選び方には、大きく分けて2つのポイントがあると考えることができます。1つ目のポイントは、金利タイプであり、2つ目のポイントは、総支払額です。  1つ目の金利タイプというのは、金利の動向に応じて、金利の種類を選ぶということです。つまり、金利が上昇傾向にある場合には、固定金利型という金利タイプを選択します。逆に、金利が下降傾向にある場合には、変動金利型を選択します。  これに対して、将来的な金利の動向が上昇傾向にあるのか下降傾向にあるのか不透明である場合には、金利の上昇によるリスクを回避するために、固定金利期間選択型を選択します。この他にも、変動金利又は短期固定金利と、長期固定金利を組み合わせた商品が用意されている場合があります。  固定金利期間選択型を選択する場合には、固定金利期間経過後の店頭表示金利が、当面は低い状況で推移すると予想されるのであれば、短期固定金利にとどめることも考えられます。これに対して、返済期間が長く、店頭金利が高くなると予想される場合には、長期固定金利又は全期間固定金利を選択すべき場合もあります。  また、これらの金利タイプを選択するうえでは、金利の動向もさることながら、各金利タイプの返済額の確認も重要です。各金利タイプの返済額は、①当初の金利、②返済期間、③固定金利期間、④固定金利期間経過後の店頭表示金利と優遇幅(一定の要件を満たす顧客に対し、金融機関が行う優遇金利の条件)によって異なるので、どの金利タイプが最も返済額が少なくなるのかについては、個別にシミュレーションした結果を確認して検討します。  2つ目の総支払額というのは、金利以外の負担も含めたすべての支払額を、各住宅ローン商品毎に試算して、これを比較すべきであるということです。つまり、金利以外の負担としては、保証料、団体信用生命保険料、事務手数料などがありますので、これらの有無を確認して、その金額を合わせた総支払額を比較します。  総支払額を比較する場合には、保証料を無料とする住宅ローン商品であるかどうか、団体信用生命保険は、強制加入か任意加入か、事務手数料は定額型か定率型かなど、商品によって条件が異なりますので、これらの条件を考慮して検討します。  このように、住宅ローンといっても、様々な知識に基づいてベストな商品を選択する必要がありますから、不動産の購入に伴うお借入れを検討されている場合には、専門家へのご相談をお勧めします。

親の不動産について

2019/12/15

親が事業目的で複数の不動産を所有しています。親はまだまだ元気なのですが、高齢になってきたので、このままだと不動産をすべて相続することになりますから、相続税の支払いに不安を感じています。収益性の高い不動産を手放さずに、また親から不動産事業を承継するために、生前にできる限り不動産を取得していきたいと...
親族間において、時価よりも低い価格で不動産が売買された場合には、税務署から、時価と取引価格の差額分について贈与があったものとみなされて、贈与税が課税される可能性があることに注意が必要です。これを「みなし贈与」といいます。なお、親族間ではない個人間でも問題となりますし、不動産以外の財産も対象となります。  相続税法7条は、「著しく低い価額」で財産を譲り受けた場合には、その取引の時点で、「著しく低い価額」と財産の時価との差額に相当する金額を、財産の譲受人が譲渡人から贈与されたものとみなすことを定めています。  では、「著しく低い価額」とは、どの程度時価よりも安ければこれに当たってしまうのでしょうか。  夫が妻などの家族に売却した土地の代金が、「著しく低い価額」に当たるとして、妻などが税務署から贈与税を課税された事案において、裁判所は、相続税評価額(問題となった事案においては、時価の約78%の価額でした。)と同じ価額か、それ以上の価額で土地の売買が行われた場合には、原則として「著しく低い価額」ということはできないと判断しました(東京地裁平成19年8月23日判決)。これが絶対の基準であるということはできないものの、みなし贈与であると判断されないための取引価格の目安にはなります。  このように、相続税を回避するため、親の生前に不動産などの財産を安く取得しようとした場合には、贈与税が課税されるべきかどうかが争われるおそれがあるという問題があります。なお、贈与税には、年間110万円の非課税枠がありますが、本件のような高額な不動産の承継では、役に立ちません。  そこで、本件では、不動産管理会社を設立し、不動産事業の収益によって同社に親の不動産を取得させたうえで、株価評価の引下げなど株式の相続税対策を講じたり、推定相続人に同社の役員報酬,退職金を得させて相続対策に活用するなど、事案に応じた様々な対策を検討する必要があります。  本件のように、親族間の財産の承継が必要な状況に置かれている場合には、弁護士や税理士等の専門家への相談をお勧めします。

テナントの立ち退き請求について

2019/12/12

私は商業用ビルを所有しており、A社がビルの一フロアにテナントとして入っていたのですが、賃料の滞納が続いた末にフロアに誰もいなくなったので、裁判で立退きの請求を認める判決を出してもらいました。しかし、フロアには依然としてパソコンやデスク等のA社の備品がそのままとなっています。判決に基づいて撤去して...
ビルからの立退きを命じる判決が出ても、A社が備品をフロアから運び出さなければ、強制執行という手続きが必要となります。  テナントの同意を得ずに備品を撤去することは禁じられます。A社は、備品をそのままにして営業を停止していますが、これらの動産は経済的価値が認められますから、勝手に処分すればA社から損害賠償請求を受けかねません。  そこで、建物の明渡しの強制執行という手続きを、判決書を必要書類の一つとして、ビルの所在地を管轄する裁判所の執行官という職員に対して申し立てます。東京地方裁判所本庁では、執行官と、①強制執行を行う日を公示する明渡し催告の日程調整や、②物件等の状況確認、③執行補助者(備品等を搬出・保管等する業者)の選定などの打合せが行われます(執行官面接)。本件では、A社の備品の搬出が必要となるため、③執行補助者の選定が必要です。裁判所の執行官室には、執行補助者に指定された登録業者の名簿が備え付けてあります。  強制執行の費用(弁護士報酬以外)の中で最も大きいのが、執行補助者に支払う料金です。たとえば、ファミリー型のマンションでも(家具等が多い場合)、50万円以上になることがあります。見積りは、運搬車両の台数や作業員の人数、所要時間等により算定されます。  明渡しの催告では、明渡しの期限と実際に強制執行を行う日(断行日といいます。)が記載された書面(公示書)が建物内に貼り付けられます。また、断行日には物品が搬出のうえ保管され、その後保管期間を経て、廃棄処分又は売却処分されます。ただし、保管期間の経過前に処分することはできず、保管期間中に賃借人が受け取りに来た場合には、引渡しが必要です。  本件では、A社にとって重要なパソコン等の備品がありますから、A社のスタッフが断行日の前日までに備品をすべて搬出する可能性もあります。この場合には、強制執行の申立てを取り下げて、執行補助者との契約をキャンセルできます。  なお、物品の保管場所は、強制執行の申立人の費用において準備する必要があり、また、保管期間経過後の処分費用についても,申立人の負担となる点にも注意が必要です。

ネットでの個人情報について

2019/12/12

インターネットの物件情報サイトにおいて物件を広告する場合、元付業者は、個人情報保護法上どのような措置が求められるのでしょうか。
個人情報とは、氏名、生年月日その他の記述などにより、特定の個人を識別することができる(生存する)個人に関する情報をいいます(個人情報の保護に関する法律(以下「法」といいます)2条1項)。  物件の売主や貸主は、取引の相手方を探索してもらうことを目的として、物件情報を、宅建業者(元付業者)に対して提供することがありますが、客付業者は、元付業者への連絡を通じて、物件を特定し、売主など特定の個人を識別することが可能となります。また、物件情報に住居表示、地番等が含まれている場合には、不動産登記簿などによって、売主などを識別することができます。ですから、物件情報は、個人情報に当たることになります。  法18条2項によれば、個人情報取扱事業者(個人情報を容易に検索できるようにデータベース、リスト等を作成し、これを事業目的に使用している事業者のことをいいます。)は、契約書などの書面に記載された個人情報を取得する場合には、あらかじめ、本人に対して、その利用目的を明示しなければなりません。  また、個人情報取扱事業者が、個人情報を第三者に提供する場合には、あらかじめ、本人の同意を得るか(法23条1項柱書)、同条2項が定めるオプトアウトの措置を講じる必要があります(オプトアウトについては、主に名簿業者が講じる措置であるため、本稿ではその解説を割愛します。)。  元付業者は、通常、媒介契約書などの書面で、個人情報を含む物件情報を取得することになりますから、法18条2項に基づき、①物件情報を、取引の相手方の探索のために利用すること、②インターネット広告などの広告に利用すること、③客付業者や買い希望者に対し、物件情報を提供することなど、物件情報を第三者に提供することが利用目的に含まれていることを、あらかじめ、売主や貸主に対して、明示することが必要となります。  また、元付業者は、物件情報を広告などによって第三者に提供することになりますから、法23条1項に基づき、物件情報を、物件情報サイトの運営者などに提供することについて、あらかじめ本人の同意を得る必要があります。  以上より、不動産流通業における実務上の取り扱いでは、媒介契約書などの書面で物件情報を取得する際、上記①~③などの利用目的について本人の同意を得ることによって、法23条1項の要件を満たすと同時に、法18条2項の要件をも満たすように書面を作成することが望ましいといえます。

親族の相続トラブルについて

2019/12/08

親が地主で土地やアパートの賃貸経営も手掛けているのですが、高齢となってきたため兄弟姉妹との共同相続が心配になっています。このままだとすべての不動産が共有になってトラブルになりやすいと聞いたのですが、どんな問題があるのでしょうか。
共有不動産について、その取扱いを決めるためには、処分であれば全員の同意が、管理であれば共有持分の過半数の同意が必要となります。そのため、共有者の間で協議がまとまらないと、売却したり、賃貸に関する事柄を決めたり、物件をリノベーションするなどといった不動産の処分や利用、改良に関することが一切できなくなってしまいかねません。  そして、不動産の共有は、多くの場合、相続のように、共有者が合意のうえで共有状態を望んで始まったわけではないことから、共有不動産の取扱いについての共有者間の協議は、意見がまとまらずに、しばしば紛争となります。紛争の態様は、共有不動産の処分の仕方、賃料収入の分配方法、固定資産税や修繕費等の負担の取決めなど、実に多様です。  このような事態を回避するために、共有物の分割という方法もありますが、分割する方法や金銭での代償による金額など、共有者間で平等になるように不動産を分けることは容易ではありません。かといって、共有物分割の訴えという裁判によって解決しようと思えば、弁護士に依頼する費用は高額となる場合も多く、また裁判による分割方法が、本来不動産が有している経済的価値を損ねてしまうという事態も考えられます。  一方、共有者としてトラブルに巻き込まれたくないと考えて、共有持分の放棄という手続をとろうとしても、不動産は登記をしないと責任を免れられない場合があるため、他の共有者に協力してもらって登記手続を行う必要があります。しかし、他の共有者が登記手続に協力しないと、こちらの場合も共有持分の移転登記を請求する裁判を起こさなければならず、やはり裁判所での手続が必要となる可能性があります。  このように、共有不動産はトラブルになってしまう可能性が高い所有形態ですから、相続等による共有は極力回避する必要があります。そこで、遺言によって不動産等の遺産の共有を防いだり、信託、生前の承継等の対策を講じなければなりません。共有を回避するための方法や、共有となってしまった不動産の取扱いについてお悩みの場合は、弁護士等の専門家へのご相談をお勧めします。

商業用ビルのテナント募集について

2019/12/08

商業用ビルを所有することになったので、テナントを募集したいと考えています。 どんなことに注意したらよいでしょうか。
テナントを募集して、建物の賃貸借契約を締結する場合には、様々なトラブルを考慮して、オーナー様のご要望に応じた契約書を作成する必要があります。中でも、賃料の滞納など、テナント側に契約違反があった場合には、契約を解除して、新しいテナントの募集を検討されることになります。そのためには、テナントとの契約を「定期建物賃貸借契約」とすることも、重要な選択肢の一つです。  建物の賃貸借契約には、普通建物賃貸借契約と、定期建物賃貸借契約の2種類があります。  普通建物賃貸借契約では、契約期間が定められたとしても、原則として契約は更新されます。貸主が契約の更新を拒否するためには、「正当事由」という貸主の建物使用の必要性を中心とした条件が、借地借家法によって要求されます。また、正当事由が認められる場合でも立退料の提供が必要となることが一般的です。商業用ビルにおいて、事業者であるテナントを退去させるために提供しなければならない立退料は、収益を上げているテナントであれば非常に高額となることも珍しくありません。 すなわち、テナントと普通建物賃貸借契約を締結した場合には、テナントに1~2か月の賃料滞納などの契約違反があったとしても、契約を解除して建物の明け渡しを求めることは容易ではありません。たとえば、イタリアレストランを営業するテナントが、月額賃料120万円を2か月分継続的に滞納していた事案でも、裁判所は、当時の社会情勢や、今後の店舗経営の見通し、その他諸事情を考慮して、普通建物賃貸借契約の解除を認めなかったことがあります(東京地裁平成24年10月3日判決)。ですから、このようなリスクを十分に認識しないまま、テナントと普通賃貸建物借契約を締結した場合には、不測の損失を被る可能性があります。  一方、定期建物賃貸借契約は、定められた契約期間が満了すれば契約は更新されることのない契約です(当事者の合意で再度契約を締結することは可能です。)。賃料の滞納その他契約違反を度々起こすテナントには、最低でも契約期間の満了時に退去させて、新しいテナントを募集できるようにしておけば、オーナー様の損失の拡大を防ぐことができます。  このように、契約形態の選択により賃料収入の確保を図ったり、その他契約の条件をオーナー様に有利に定める契約書の作成は、安定的な不動産賃貸経営を営む上で不可欠となります。オーナー様それぞれのご要望に応じた建物賃貸借契約書を作成するために、弁護士等専門家へのご相談をお勧めいたします。

不動産取引の注意点について

2019/12/08

不動産の取引を考えているのですが、どんなことに注意したらよいでしょうか。
不動産の売買契約は、高額な取引となりますから、契約当事者が互いに損害を被らないように、一般的には、契約書が作成されます。不動産売買契約書における重要な内容は、以下にご説明します。 1.物件の表示   登記簿に基づき表示されますので、表示に誤りがないか確認します。 2.売買代金・手付金、決済日   売買代金・手付金の金額を確認するとともに、決済日や手付解除の期限を確認します。 3.土地の実測   登記簿に表示された土地の面積と、実際の面積が異なる場合には、売買代金の精算の有無を取り決めます。 4.所有権の移転・引渡し   不動産取引の実務では、売買代金の決済の際に、所有権移転登記の必要書類と鍵の引渡しが行われます。 5.抵当権・賃借権の取扱い   抵当権がきちんと抹消されて引き渡されることになっているか、また、テナント(賃借人)の引継ぎがあるかどうかを確認します。 6.公租公課の精算   引渡しの日を基準として、固定資産税などの税金を日割り計算することにより、売主と買主の負担が決められます。 7.瑕疵担保責任   物件に相当な注意を払っても見つからなかった欠陥があった場合に問題となります。「瑕疵」とは、物件が通常有すべき安全性を備えていないことをいいます。何が「通常有すべき安全性」なのかは、売買契約の目的などによって決まりますが、不確定な概念ですので、契約書でしっかりとその内容を決めておく必要があります。 8.契約違反による解除・損害賠償(違約金)   契約違反があった場合に、売買契約を解除できる条件を定めます。また、契約に違反した相手に対し損害を賠償させるために、違約金を定めます。違約金は、売買代金の10%から20%に設定されることが一般的です。 9.融資特約   買主が、住宅ローンを利用して住宅を購入する場合などには、融資特約が定められることがあります。買主が必要な手続きを守らなかったなどの責任がなければ、住宅ローンの審査が通らなかった場合、売買契約を無条件で解除することができます。 10.反社会的勢力の排除   取引相手が反社会的勢力と関わりがある場合には、売買契約を直ちに解除することができます。 11.不可抗力による損失の分担   天災などにより、物件が損傷したり、滅失してしまった場合の取り決めです。損失を被る条件を確認し、できる限り不可抗力による損失を受けないように手当てしましょう。  以上、不動産売買契約書の記載事項を簡略化してご説明しましたが、実際の契約条項が、自らに不利な内容となっていないかどうか、相手方が提示してきた契約書について適切に判断することには専門的知識が要ります。ですから、不動産の取引をお考えの場合には、弁護士等専門家に契約書のチェックをご依頼になることをお勧めします。

実家の民泊利用についての相談です。

2019/12/08

転勤で実家のある東京を離れて地方に移り住みましたが、近年、両親が相次いで他界し、実家が空き家になりました。 思い入れのある実家ですから手放さずに、外国人観光客の多い地域なので宿泊施設にリノベーションして活用しようと考えています。 どのように運営すればよいでしょうか。
住宅の全部又は一部を活用して、旅行者等に有料で宿泊サービスを提供することを「民泊」といいます。民泊を運営するためには、簡易宿所営業と特区民泊という方法が認められていましたが、いずれも限定的な運用に止まっており、増加の一途を辿る訪日観光客等を巡る宿泊ニーズに応えられておらず、また無許可で旅館業を営むいわゆる「ヤミ民泊」に対応する必要性から、平成29年6月、より規制の緩和された民泊営業を可能とする住宅宿泊事業法(以下「民泊新法」といいます。)が成立し、平成30年6月から施行されました。  個人宅であっても、人を有料で宿泊させる営業は、原則として旅館業法の規制を受け、自治体において旅館業営業許可を得る必要があります。しかし、旅館業法上の施設に関する基準等をクリアすることは容易ではありません。一方、民泊新法では、民泊事業を営む住宅宿泊事業者が都道府県知事に届出を行うことにより、民泊事業を運営することができます。  民泊新法の民泊には、家主居住型と家主不在型という2つの居住要件があります。家主居住型は、届出住宅に住宅宿泊事業者が生活の本拠として居住しながら届出住宅を管理するものをいいます。これに対し、家主不在型は、住宅宿泊事業者が生活の本拠としていないか、又は不在のものをいいます。  本件では、空き家となった実家に宿泊者を受け入れるものですから、家主不在型に当たります。家主不在型は、家主居住型と比べて近隣トラブルが発生する可能性が高いことから、国土交通省の登録を受けた住宅宿泊管理業者に対し、物件の管理・運営を委託する必要があります。  また、年間の営業日数の上限が原則として180日とされており、これを超える場合には旅館業営業許可が必要になります。  これらの規制に加えて、民泊新法においては、住宅の条件から営業場所・消防法令の規制、届出手続、住宅宿泊事業者に対する規制のほか、契約・トラブルへの対処など、様々な問題に対応する必要がありますので、その運営に当たっては、弁護士等専門家へのご相談をお勧めします。

パンフに記載されていた内容や説明と違う場合の対応について

2019/12/08

タワーマンションを投資目的も兼ねて購入したところ、仲介業者Tが作成したパンフレットに「スケルトンから内装リノベーション予定《デザイナー監修》」と広告されていたにもかかわらず、実際は、売主によって、既存の壁や天井を利用する内装工事が行われました。  スケルトン状態からの内装工事(専有部分についてコ...
不動産取引の仲介は、民法に定められている(準)委任契約に当たるため、仲介業者は、依頼者に対し、善良なる管理者の注意をもって、仲介業務を処理しなければなりません。そして、依頼者が物件を購入したり、借りたりすることを検討している状況では、その判断に重要な影響を及ぼす事柄を、依頼者に説明する義務があります。   ところで、仲介業者が、依頼者に説明するための前提として、調査を行うことが義務づけられているのかが問題となることがあります。  仲介業者が説明事項について既に知っているのであれば、調査したことを前提とした説明義務を負っていることになります。 これに対し、説明事項を知っているわけではないものの、知ることができるといえる場合にも、調査義務が認められる場合があります。 ただし、調査すれば判明する事柄のすべてについて、仲介業者に調査義務を負わせることは、際限のない義務を負わせることになりかねません。そこで、①容易に知ることができる事柄や、②調査の依頼を受けてこれを引き受けた事柄、③取引の具体的な状況からすれば、仲介業者として当然に調査するべきであると考えられる事柄などについては、調査義務があると考えられています。  たとえば、裁判所では、土地の売買での境界や、賃貸中の物件の売買における賃借人の属性などについて、仲介業者の調査義務が認められることがあります。  本件では、Tは自らパンフレットに内装工事がスケルトン状態で行われると広告していたのですから、この説明内容と異なるところがないか調査する義務を負っていたということができます。したがって、Tは、調査説明義務を怠ったことを理由に損害賠償責任を負います。似た状況で争われた裁判では、仲介業者の調査説明義務違反がなければ、買主は、スケルトン状態からの内装工事ではないことを前提とした販売価格の交渉ができたことを理由に、仲介業者に対し、慰謝料として100万円の支払いが認められています(東京地裁平成25年3月18日判決)。

銀行の融資のポイントは?

2019/12/08

銀行が不動産購入のための融資の可否を決定するときに、ポイントとなるのはどのような点にあるのでしょうか。
銀行が融資の可否を決める判断基準として、一般的には、5つのポイントがあります。すなわち、①安全性、②収益性、③成長性、④流動性、⑤公共性です。  最も重要である①安全性のチェックでは、返済が滞るという事態が起こらないように、資金の使途、返済能力、及び担保の有無が審査されます。  まず、資金の使途が、たとえば自宅購入のための個人ローンなのか、それともアパートやマンションを投資用の目的で建築、購入するためのアパートローンなのかによって、基準が異なります。自宅購入のためのローンは、自宅を手放すことを避けるために通常は優先的に返済されるので、一般的には返済が滞る確率が低くなります。これに対して、投資用の資金は、投資が失敗した場合など、返済が滞る可能性が高いと考えられています。また、融資金額がアパート等の建築費用にきちんと充当されているかの確認がなされます。   次に、個人ローンの場合には、安定した収入があって、他の借入金も含めた年間の返済額がおおむね収入の30%から40%以内であるかが審査されます(ただし、年収の低さに応じて審査が厳しくなることがあります。)。  他方で、アパートローンの場合には、その地域のアパート・マンションの需要はどの程度あるのか、入居率が想定よりも若干下回ったとしても、返済を続けることができるかどうかなどが調査されます。その際、アパート・マンションの賃料収入以外の収入の有無も重要となります。つまり、給与収入等、賃料収入以外の収入が相当程度ある場合には、入居率が下がったとしても返済が滞るリスクがその分低くなると判断されます。   加えて、担保の有無も重要です。担保評価より上回る金額の融資は基本的にはできないと考えた方がよいでしょう。  その他、②収益性とは、金利等を考慮して、銀行にとって採算が取れるかどうか、③成長性とは、取引先に成長の見込みがあり、銀行との取引が発展する可能性があるかどうか、④流動性とは、融資資金が固定化せずに回転するかどうか、⑤公共性とは、銀行の公共的性格に鑑みて、反社会的であるなどふさわしくない取引ではないかどうかが検証されます。  以上のとおり、銀行が融資を決定する際のポイントとしては、①を中心に、②から⑤までの観点がありますから、これらの点を考慮し、準備したうえで融資を申し込む必要があります。

復旧工事について

2019/12/08

マンションを購入して新生活をはじめ、気に入った家具を購入して設置しました。 その中に、壁付けで使用する収納棚付きの大型デスクもあります。地震の際に壁から外れて動かないように、壁柱に穴を開けて固定する工事を業者に依頼しました。 そうしたところ、マンション管理組合の管理人から、壁柱に開けた穴を塞いで...
建物の区分所有等に関する法律(以下「区分所有法」といいます。)57条は、区分所有者が、建物の保存に有害な行為や、建物の管理又は使用に関して区分所有者の共同の利益に反する行為(共同利益背反行為と呼ばれます。)をした場合、又はそのおそれがある場合に、管理者等が、その行為の結果の除去や予防等を求めることができると定めています。  建物全体に係る一つ一つの壁柱は、構造上の共有部分とされます。本件では、これに穴を開ける行為が、区分所有法57条に規定する共同違反背反行為に当たるかどうかが問題となります。  デスクを設置した業者が専門業者であり、壁柱の強度に影響を及ぼさないように工事したことが仮に証明された場合には、建物の保存に有害な行為であるとはいえないわけですから、管理者側の主張は認められないようにも思われます。  しかし、区分所有法57条が定める請求の対象となるのは、建物の保存に現実に有害な行為に限定されるわけではないと裁判所は判断しました(東京地裁平成3年3月8日判決)。区分所有者が、区分所有法17条1項が要求する集会の決議に諮ることなく、個々の判断で共有部分に変更を加えること自体が、共同利益背反行為に当たるというべきであることをその理由として挙げています。  本件では、デスクの設置を専門業者に依頼して、建物の強度に影響が生じないように工事していることから、建物の保存に有害ではないことを証明できる可能性がありますが、裁判所の考え方に基づけば、このような場合であっても、共有部分に変更を加えることになる以上、集会において、区分所有者及び議決権の各4分の3以上の多数の決議が必要になります。  ですから、マンションなどの集合住宅において、区分所有者の居室内など専有部分に関する工事であっても、共有部分にわたる場合には、集会の決議に諮らなければいけません。専有部分を希望どおりに使用するための問題など、区分所有に関してお悩みの場合には、弁護士にご相談ください。

アパートの家賃滞納について

2019/12/08

アパート経営を行っていますが、その部屋の借主の家賃滞納に悩んでいます。滞納している借主には部屋から出て行ってもらって、新しい借主を募集したいのですが、部屋の明渡しは、どのように進めれば良いのでしょうか。
部屋の明渡しは、(1)借主への契約解除の通知、(2)訴訟提起、(3)強制執行という手続の段階がありますので、順番にご説明します。  家賃の滞納はもちろん契約違反ですが、直ちに退去を求められるわけではなく、2~3か月分の滞納が必要です。もし、借主が家賃を2か月分以上滞納しているのであれば、契約の解除が認められる可能性が高いですから、(1)借主に契約を解除したので部屋を明け渡すように通知します。  この通知を借主が受け取っても部屋から退去しないのであれば、(2)訴訟提起が必要になります。訴訟提起のためには、借主か保証人の住所又はアパートの所在地を管轄する裁判所での手続が必要です。仮にオーナー様のご住所とアパートが遠く離れていると、遠くの裁判所での手続になる場合があります。  訴訟の申立てには訴状などの必要書類の提出が必要です。書類が裁判所に受理されると、裁判所から第1回目の期日を指定する連絡がきます。争点のない家賃滞納を理由とする訴訟では、2か月程度の間に1~2回の裁判所への出席が求められ、契約の解除の当否が審理されて、認められれば部屋を明け渡すように命令する判決が出されます。  ところが、部屋の明渡しを認める判決が出たにもかかわらず借主が退去しない場合には、(3)強制執行が必要となります。明渡しを命じる判決が出たとしても、力づくで借主を追い出すことは禁じられているからです。そこで、裁判所の職員である執行官が実行する強制執行を申し立てて、立ち退かせることになります。  執行官は、オーナー様と打合せを行い、部屋の明渡しの強制執行を行う日を公示する「明渡しの催告」と呼ばれる手続の実行日を決定します。明渡しの催告では、執行官、立会人、執行補助者(借主の家具や荷物を搬出して保管する業者です。)、鍵技術者(部屋の合鍵がない場合に必要です。)が部屋に出向き、部屋の状況を確認して、明渡しの期限と強制執行を行う日(断行日と呼ばれます。)が記載された公示書を建物内に貼り付けます。そして、断行日には執行官たちが部屋に出向いて、借主を立ち退かせたり、部屋の荷物の搬出などを行い、建物の明渡しが完了します。  これら一連の手続を、オーナー様がスムーズに実現することはとても大変です。ですから、家賃滞納にお悩みの場合には、弁護士へのご相談をお勧めします。
条件に一致するデータが見つかりませんでした
ホームページ
https://www.martial-arts.jp/information/fukuoka.htm
事務所名
弁護士法人Martial Arts 福岡支店
電話番号
092-402-0933092-402-0933
所在地

〒812-0027

福岡県福岡市博多区下川端町2番1号 博多座・西銀再開発ビル 6階

交通手段

地下鉄「中洲川端」駅 7番出口 直結