民法には、不動産のような特定物に、個々の取引に応じて通常では発見できないといえる欠陥(隠れた瑕疵といいます。)があった場合には、瑕疵担保責任という売主が負う責任が定められています。この責任には、①瑕疵のない目的物を買うことができると信じたことによって買主が被った損害(信頼利益といいます。)の賠償責任と、②契約の目的が達成できない場合の、契約解除に基づく売買代金の返還義務の2つの責任があります。そして、この瑕疵担保責任以外に、瑕疵のない目的物の引渡義務と、瑕疵の修補義務を認めるためには、原則として特約で定める必要があります。
2020年4月からは、民法の瑕疵担保責任の規定は改正されて、契約不適合責任という売主の責任が新しく定められました。契約不適合責任には、これまで特約で定める必要があった目的物の引渡義務と修補義務(新民法562条1項)のほか、売買代金の減額請求(同法563条1項、2項)が認められることになりました。また、損害賠償責任の範囲は、買主が契約に適合する目的物を取得できれば得られるはずであった利益(たとえば転売利益)にも及び得ることになりました(同法415条、同法564条)。さらに、契約の解除は、契約の目的が達成できない場合に限定されないことになりました(同条)。
本件では、地下の排水設備が備え付けられていなかったのですから、一般の買主にとっては通常発見することができない欠陥があったということができます。また、地下の排水設備の設置のために工事をやり直すことは、事実上不可能であるとの鑑定結果が出ているようです。したがって、現行の民法の下では、契約を解除して、売買代金の3億円の返還請求と、銀行借入金の利息に相当する金額など、信頼利益の損害賠償請求が認められると考えられます(神戸地裁平成9年9月8日判決)。これに加えて、新しい民法の下では、Xは転売目的であることを認識していましたから、転売利益についても損害賠償請求できることになります。
このように、購入された物件に欠陥などが見つかってお悩みの場合には、弁護士にご相談ください。
※この投稿は、2019年12月15日時点の回答になります。ご自身の責任で情報をご利用いただきますようお願い致します。