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親の不動産について

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親が事業目的で複数の不動産を所有しています。親はまだまだ元気なのですが、高齢になってきたので、このままだと不動産をすべて相続することになりますから、相続税の支払いに不安を感じています。収益性の高い不動産を手放さずに、また親から不動産事業を承継するために、生前にできる限り不動産を取得していきたいと考えているのですが、注意しなければならないことはあるのでしょうか。

齋藤 拓

齋藤 拓 弁護士(福岡県弁護士会)

親族間において、時価よりも低い価格で不動産が売買された場合には、税務署から、時価と取引価格の差額分について贈与があったものとみなされて、贈与税が課税される可能性があることに注意が必要です。これを「みなし贈与」といいます。なお、親族間ではない個人間でも問題となりますし、不動産以外の財産も対象となります。
 相続税法7条は、「著しく低い価額」で財産を譲り受けた場合には、その取引の時点で、「著しく低い価額」と財産の時価との差額に相当する金額を、財産の譲受人が譲渡人から贈与されたものとみなすことを定めています。
 では、「著しく低い価額」とは、どの程度時価よりも安ければこれに当たってしまうのでしょうか。
 夫が妻などの家族に売却した土地の代金が、「著しく低い価額」に当たるとして、妻などが税務署から贈与税を課税された事案において、裁判所は、相続税評価額(問題となった事案においては、時価の約78%の価額でした。)と同じ価額か、それ以上の価額で土地の売買が行われた場合には、原則として「著しく低い価額」ということはできないと判断しました(東京地裁平成19年8月23日判決)。これが絶対の基準であるということはできないものの、みなし贈与であると判断されないための取引価格の目安にはなります。
 このように、相続税を回避するため、親の生前に不動産などの財産を安く取得しようとした場合には、贈与税が課税されるべきかどうかが争われるおそれがあるという問題があります。なお、贈与税には、年間110万円の非課税枠がありますが、本件のような高額な不動産の承継では、役に立ちません。
 そこで、本件では、不動産管理会社を設立し、不動産事業の収益によって同社に親の不動産を取得させたうえで、株価評価の引下げなど株式の相続税対策を講じたり、推定相続人に同社の役員報酬,退職金を得させて相続対策に活用するなど、事案に応じた様々な対策を検討する必要があります。
 本件のように、親族間の財産の承継が必要な状況に置かれている場合には、弁護士や税理士等の専門家への相談をお勧めします。
※この投稿は、2019年12月15日時点の回答になります。ご自身の責任で情報をご利用いただきますようお願い致します。
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