不動産投資講座 Knowledge
2021年3月に現在の一歩法律事務所を設立。契約書のチェックや文書作成、起業時の法的アドバイス等、予防法務を主として、インターネットを介した業務提供を行っている。
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建設工事に関するご相談で、しばしば目にするのが「引渡日に物件を引き渡してもらえない」という事案です。
工期が遅れたとき、施工会社に責任はあるのか、賠償金を支払ってもらうことはできるのかについて解説します。
事前に契約書に工期遅れの場合の違約金を書いておくことで、揉め事を防止できる可能性も紹介しています。
工期が遅れたかどうかの判断は、契約書に記載された引き渡し日より遅れたかどうかが判断基準となります。
物件が売主から買主に引渡される日、つまり引渡し日は契約書に書いてあるものです。
それは売買契約でも請負契約でも変わりありません。つまり引渡しとは契約の履行であり、引渡し日に物件を引渡してもらえないのは契約違反となる可能性が出てきます。
不動産会社や施工会社から「納期が遅れそうだ」と連絡を受けたときは、まずは契約書を見て、引渡し日に関連する項目を確認しましょう。
売主側の営業担当から口頭で聞いた引渡し日と、契約書に書かれた引渡し日とが異なっているケースもまれにありますので、契約書の確認は大切です。
許容できない大幅な遅れは問題です。とりわけ、不動産事業を始めるための建築事業である場合、工期が延びる分、事業の開始も遅れてしまうことになりますから、実害も生じます。
工事が遅延したら、違約金を請求することができます。違約金については、契約書に引渡し日とともに記載してあることが多いです。契約書に違約金について記載しない業者もいるようなので、契約書にサインする前にしっかりチェックすることをおすすめします。また、違約金に言及していないことがわかったら、違約金について契約書に盛り込むよう依頼してください。
賃貸住宅など収益物件の引渡しが遅れ、予定していた期日に事業が開始できなかった場合は、その間の想定された賃料収入のうちの収益部分の補償を請求することになります。
また自宅を賃貸併用住宅として建てていて、完成まで仮住まいで過ごしている場合は、その仮住まいの賃料も補償請求の対象となります。
なお、違約金については契約書に記載がなくても、約款で定められているケースが多いです。「請負代金額の年利10パーセントの割合による遅延損害金」などと定められることがあります。
これらのようなケースでは、売主の責任を問うわけにはいかず、違約金や保証金の請求はできないものと考えてください。契約書においても、「不可抗力」や「危険負担」等の項目の下で、売主側は工期遅れの責任を負わない旨が定められていることが多いです。
また、言うまでもないかもしれませんが、買主が度重なる設計変更を指示したなどの理由で工事が遅れた場合も、違約金や保証金の請求はできません。
ただ、現実的な話として、工事の遅れは「想定内」の事象。昨今は人手不足も深刻ですし、業者間の連携がスムーズでなく、予定していた部材が入荷しないといった事態も珍しくありません。
数日程度の許容できる遅れなら、買主と売主が話し合って、違約金の一部の支払い、もしくは違約金なしで引渡し日を先延ばしする場合もよくあるようです。
工事が遅れた場合、さらなるトラブルに発展する場合もあります。例えば、建物が未完成のまま引渡そうとしたり、残代金の支払いを要求されたりするケースも考えられなくはありません。もちろん、いずれも断固拒否してください。
工事の遅れが深刻となり、もはや売主側がまったく信頼できなくなったという段階まで拗れてしまった場合は、契約解除を考えることになります。
契約解除については、法律上、買主は売主側に責任がない場合でも自由に解除できますが、この場合には損害を補填すべき義務を負うことになります(民法641条)。基本的に履行済みの部分(工事が終わっている部分)に応じた報酬を損害として支払う必要があります。
他方で、売主側の責任がある場合の解除については、買主からの損害賠償請求も可能です。出来高部分に応じた報酬の支払いと、買主が被った損害について相殺するなど、解決方法について売主側と協議したほうが良いでしょう。
しかし契約解除は最悪のケースで、できれば避けたい局面です。工事を引継いでくれる施工会社がなかなか見つからないのが実情ですし、引継いでくれる施工会社があったとしても、トータルの工事予算は当初より膨らんでしまうからです。
工事遅延はありがちですから、売主側としては工期になるべく余裕を持たせた引渡し日を設定しておきたいところでしょう。他方で、買主としては引渡し日があまりに先に設定されてしまうと、損失を被ることになりかねません。契約締結時に、引渡日についても正確に定めるようにしましょう。また、契約書には、引渡し日だけでなく完成日も記してもらうようにしましょう。
「工事が遅れても引渡しできる」などというこじつけをさせないための予防策です。さらに、工事の遅延が確定した際には、本当に引渡せるのはいつなのか、完成はいつになるのかを書面にしてもらいましょう。
もし工期の遅れに関するトラブルに遭ってしまった場合は、弁護士などの専門家に相談することをオススメいたします。
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