秋山直人 弁護士(第二東京弁護士会)・宅地建物取引士・その他
確かに,売主が法人で,買主が消費者(非事業者である個人)であると,売買契約書に,売主が契約不適合責任を一切負わないという免責規定を置いても,消費者契約法8条によって,無効となります。
よって,買主は売主に対し,民法の規定により,契約不適合がある,すなわち,「引き渡された目的物が種類、品質又は数量に関して契約の内容に適合しない」ものであるときは,修繕請求や,修繕をしない場合の代金減額請求ができるということになります。
「水道管からサビがでる」については,契約不適合となる可能性が高いように思います。
「シロアリのいた柱を直した跡がある」については,そのことが直ちに,現在白アリ被害があることを示しているわけではないと思います。
世の中には,消費者契約法の知識がなく,「契約不適合責任免責」と書いてあれば諦める人も多いと思いますので,消費者契約法によれば無効であっても,「契約不適合責任免責」を契約書に書いておく,ということもあるでしょうから,仲介業者に責任を追及するのは困難であると思います。
また,仲介業者の重要事項説明義務は,買主に対してのものであり,売主に対してのものではありません。消費者契約法について説明がなかったからといって,仲介業者に責任を追及するのは困難であると思います。
消費者契約法
第二条 この法律において「消費者」とは、個人(事業として又は事業のために契約の当事者となる場合におけるものを除く。)をいう。
2 この法律(第四十三条第二項第二号を除く。)において「事業者」とは、法人その他の団体及び事業として又は事業のために契約の当事者となる場合における個人をいう。
(事業者の損害賠償の責任を免除する条項等の無効)
第八条 次に掲げる消費者契約の条項は、無効とする。
一 事業者の債務不履行により消費者に生じた損害を賠償する責任の全部を免除し、又は当該事業者にその責任の有無を決定する権限を付与する条項
2 前項第一号又は第二号に掲げる条項のうち、消費者契約が有償契約である場合において、引き渡された目的物が種類又は品質に関して契約の内容に適合しないとき(当該消費者契約が請負契約である場合には、請負人が種類又は品質に関して契約の内容に適合しない仕事の目的物を注文者に引き渡したとき(その引渡しを要しない場合には、仕事が終了した時に仕事の目的物が種類又は品質に関して契約の内容に適合しないとき。)。以下この項において同じ。)に、これにより消費者に生じた損害を賠償する事業者の責任を免除し、又は当該事業者にその責任の有無若しくは限度を決定する権限を付与するものについては、次に掲げる場合に該当するときは、同項の規定は、適用しない。
一 当該消費者契約において、引き渡された目的物が種類又は品質に関して契約の内容に適合しないときに、当該事業者が履行の追完をする責任又は不適合の程度に応じた代金若しくは報酬の減額をする責任を負うこととされている場合
民法
(買主の追完請求権)
第五百六十二条 引き渡された目的物が種類、品質又は数量に関して契約の内容に適合しないものであるときは、買主は、売主に対し、目的物の修補、代替物の引渡し又は不足分の引渡しによる履行の追完を請求することができる。ただし、売主は、買主に不相当な負担を課するものでないときは、買主が請求した方法と異なる方法による履行の追完をすることができる。
2 前項の不適合が買主の責めに帰すべき事由によるものであるときは、買主は、同項の規定による履行の追完の請求をすることができない。
(買主の代金減額請求権)
第五百六十三条 前条第一項本文に規定する場合において、買主が相当の期間を定めて履行の追完の催告をし、その期間内に履行の追完がないときは、買主は、その不適合の程度に応じて代金の減額を請求することができる。
※この投稿は、2022年12月10日時点の回答になります。ご自身の責任で情報をご利用いただきますようお願い致します。