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隣の新築分譲住宅の境界線からの距離について

相談者No.1309
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築30年以上の3階建てアパートを経営していて、その隣に2階建て木造戸建てが長年建っていたのですが、建築会社にその土地が売却された後、新しく分譲住宅が建築され若い家族に1年半程前に売却されました。
最近「民法234条1項:建物を築造するには、境界線から五十センチメートル以上の距離を保たなければならない。」と「民法235条1項:境界線から1メートル未満の距離において他人の宅地を見通すことのできる窓又は縁側(ベランダを含む。)を設ける者は、目隠しを付けなければならない。」という決まりがあることを知り確認したところ、現状は以下のようになっていました。

・境界線から外壁は51㎝離れているものの、窓が外壁より5センチ程度出っ張っている構造のものが設置されていて、窓枠の表面からすると50㎝以下になっていた。

・目隠しに関しては、1階の窓にはシャッターが設置してありますが、その他の窓は素通しガラスではないものの、通常の横にスライでして開閉する窓で目隠しなどは何も設置されていない。

質問は、
1.新築物件の外壁からは51㎝離れているが、窓が出っ張っている場合は最も境界線に近い点(この場合は窓枠)からの距離が問題になるのでしょうか?

2.1m離れていない窓について目隠しの設置を求めることはできますか?

3.この件について問い合わせるのは、まず住宅を建築した会社にすべきか、現在の所有者のどちらにすべきでしょうか?

4.古くから建っている方は境界線との距離が50㎝以上離れていなくても、後から新しく建てた側は何も言えないのでしょうか?

5.窓に目隠しを設置することに関しても、古くから建っている方には、設置義務はないのでしょうか?

秋山直人

秋山直人 弁護士(第二東京弁護士会)・宅地建物取引士・不動産鑑定士・その他

建築基準法63条は,防火地域又は準防火地域内にある建築物で,外壁が耐火構造のものについては,その外壁を隣地境界線に接して設けることができるとしており,これは民法234条の特則と回されています。

従って,まずは,建築基準法63条の場合に該当しないことの確認が必要です。

(隣地境界線に接する外壁)
第六十三条 防火地域又は準防火地域内にある建築物で、外壁が耐火構造のものについては、その外壁を隣地境界線に接して設けることができる。

そして,民法234条2項は,建物完成後は損害賠償の請求のみをすることができるとしている点に留意が必要です。

(境界線付近の建築の制限)
第二百三十四条 建物を築造するには、境界線から五十センチメートル以上の距離を保たなければならない。
2 前項の規定に違反して建築をしようとする者があるときは、隣地の所有者は、その建築を中止させ、又は変更させることができる。ただし、建築に着手した時から一年を経過し、又はその建物が完成した後は、損害賠償の請求のみをすることができる。

その上でご質問についてですが

1.新築物件の外壁からは51㎝離れているが、窓が出っ張っている場合は最も境界線に近い点(この場合は窓枠)からの距離が問題になるのでしょうか?

→出窓その他の建物の張り出し部分と境界線との距離が問題になります(東京地判H4.1.28)。

2.1m離れていない窓について目隠しの設置を求めることはできますか?

→民法235条に基づく請求ですから,境界線から1m未満であって,「他人の宅地を見通すことのできる窓」であることが必要です。

第二百三十五条 境界線から一メートル未満の距離において他人の宅地を見通すことのできる窓又は縁側(ベランダを含む。次項において同じ。)を設ける者は、目隠しを付けなければならない。
2 前項の距離は、窓又は縁側の最も隣地に近い点から垂直線によって境界線に至るまでを測定して算出する。

3.この件について問い合わせるのは、まず住宅を建築した会社にすべきか、現在の所有者のどちらにすべきでしょうか?

→現在の所有者にすべきでしょう。

4.古くから建っている方は境界線との距離が50㎝以上離れていなくても、後から新しく建てた側は何も言えないのでしょうか?

→民法234条は昔からありますので損害賠償請求の余地はあると思います。

5.窓に目隠しを設置することに関しても、古くから建っている方には、設置義務はないのでしょうか?

→民法235条は「境界線から一メートル未満の距離において他人の宅地を見通すことのできる窓・・・を設ける者は」という規定ぶりのため,あらたに窓を設置する場合の規範と読めます。そうすると,建築時には隣地に家がなく,後から隣地に家が建った場合には,民法235条に基づく請求はなかなか難しいのではないかと思います。考えられるとすれば,プライバシー権に基づく請求でしょうか。
※この投稿は、2022年06月14日時点の回答になります。ご自身の責任で情報をご利用いただきますようお願い致します。
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