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建築請負契約を途中解除したら代金は返ってくるか弁護士が解説


【相談】建物の新築工事の不具合で契約を解除しました。請負代金を返してもらいたいです。

土地を購入して、工務店との間で建物の新築工事の請負契約を締結しました。

しかし、工事の途中で基礎工事と杭工事に不具合があることが判明したため、請負契約を解除して、請負代金を返すように工務店に請求したところ、基礎工事と杭工事は補修が可能であることを理由に返してもらえません。

請負契約は解除していますし、工事には不具合があるのですから、請負代金は返してもらえるのではないでしょうか。

【回答】注文者が利益を受けているか否かにより請負代金を返してもらえるかどうかが決まります。

工務店が行った新築工事のうち、可分な部分の工事によって注文者が利益を受けているときは、その部分の工事は完成しているとみなされます。そして、工務店は注文者の受ける利益の割合に応じて、報酬を請求することができます。

そうすると、基礎工事と杭工事の不具合が軽微であるため、不具合があったとしても注文者が利益を受けているといえるのであれば、その割合に応じて工務店には報酬請求権が認められることから、その部分の請負代金の返還は請求できません。

これに対し、基礎工事と杭工事に、やり直しをしなければならない程の大きな不具合があり、注文者が利益を受けているといえない場合には、請負代金の返還が認められます。

関連記事:建築請負契約を中途解除したときの出来高報酬

請負契約を途中解除しても代金を請求できる場合があります

これまで、民法には、請負契約が途中で解除された場合の請負人の報酬請求権については規定がありませんでした。

しかし、裁判所は、請負人の建築工事に不具合があるために工事完成前に契約が解除された場合であっても、既に行われた工事が可分で、その工事によって注文者が利益を受けているときは、出来高に応じて請負人の報酬請求権が認められると判示していました(最高裁昭和56年2月17日判決)。

2020年4月1日から施行される改正民法には、この判例法理が明文化されました。つまり、改正民法634条には、請負契約が仕事の完成前に解除された場合で(同条2号)、請負人が既にした仕事の結果のうち、可分な部分の給付によって注文者が利益を受けるときは、その部分を仕事の完成とみなして、請負人は、注文者が受ける利益の割合に応じて、報酬を請求することができると規定されました。

建築請負契約の途中解除に関する裁判例

裁判所では、前記最高裁昭和56年2月17日判決に基づいて、請負契約が途中で解除された場合の請負人の報酬請求権の有無について判断してきました。

建物の新築工事で基礎工事と杭工事に不具合があったため、注文者が請負契約を解除し、これらの工事のために支払われた請負代金の返還を請負業者に求めた事案において、東京地裁平成26年12月24日判決は、以下のように判断しています。

同事案では、基礎部分に鉄筋からコンクリートの表面までの距離である、かぶり厚さが不足していました。このため、広範囲の補修が必要となるだけでなく、補修によってコンクリートの一体性が確保できなくなり、構造的な強度の確保に問題が生じてしまう状況でした。

このような状況では、基礎部分は解体してやり直すしかないと裁判所は判断し、注文者が利益を受けているとはいえないとして、基礎工事のために支払われた分の請負代金の返還を認めました。

これに対し、杭工事については、33本中その1本に15.8cmのずれがありました。しかし、杭を抜いて打ち直すのではなく、ずれを前提として基礎形状を工夫するなどして解決できるのが通常であるところ、最大で15.8cmのずれであれば、補修で対応ができると判断されました。また、33本中1本にずれがあったとしても、建物全体が危険な状態になるとも思われないと判断されました。

その結果、杭工事をやり直す必要はなく注文者は利益を受けているとして、このために支払われた分の請負代金の返還は認められませんでした

注文者が利益を受けているか否かによって
請負代金を返してもらえるかどうかが決まります

以上の裁判所の判断に照らすと、本件においても、基礎工事と杭工事をやり直さなければならない程の大きな不具合であれば、注文者が利益を受けているとはいえないことから、これらの工事のために支払われた請負代金を工務店は注文者に返還しなければなりません。

これに対し、これらの工事の不具合が軽微であり、注文者が工事によって利益を受けているといえるのであれば、その分の請負代金を返してもらうことはできないことになります。

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